【山行記録】 2011年登り初め 正月登山 厳冬期の仙丈ヶ岳へ 後編 〔2011.01.03~04〕
2011年1月3日、僕らは厳冬期の南アルプスの女王、仙丈ヶ岳の頂を目指していた。
3日ならば行ける。そう判断した僕の選択は正しかったのか否か。
初の厳冬期南アルプス、初の厳冬期3000m峰、果たして無事その頂を踏む事が出来たのだろうか…?
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2011年1月2日 (火) 天候:晴れ 及び 2011年1月4日 (木) 天候:晴れ
【初日・3日目】 〔赤線〕 戸台~第二堤防~丹渓山荘~八丁坂~大平山荘~北沢峠、長衛荘~北沢駒仙小屋(テント泊) 往復


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2010年1月3日 (水) 天候:晴れ
【気温】 【テント場】 -18℃ 〔AM4:30〕 【仙丈ヶ岳山頂】 -13℃ 〔AM9:00〕
【2日目】 〔青線〕 北沢駒仙小屋~二合目~大滝ノ頭~小仙丈~仙丈ヶ岳~小仙丈~大滝ノ頭~長衛荘~北沢駒仙小屋(テント泊)


・ 高低差、距離、コース概要は上記の通り。
・ 地図上の通し番号は、これからブログに添付する画像の撮影したポイント。




1月3日早朝。
まだ日も登らぬ暗いうちにテント場を出発した僕らは、いつになくハイペースで登山道を駆け上がっていた。
僕は焦っていた…何故ならば一刻も早く登らなければならなかったから。
タイムリミットは刻一刻と迫っている。
二合目を、三合目を、四合目を過ぎ、大滝ノ頭に着く頃、既に僕らに残された時間は30分しかなかった。


『30分で小仙丈まで行けるか…行ける訳ねぇよな…』


いや、しかしここまできて諦めるわけには行かない。
オーバーペースで上がる息を押し殺し、すでに乳酸がたまり始めた手足を無理やり奮い立たせ、僕らは小仙丈の頂を目指した。

一体何故僕らはこんなにも焦っていたのか??
大滝ノ頭通過時間にして午前6時20分。
仙丈ヶ岳に登る時間としては決して遅い時間ではない、というかむしろ今日一番か二番目くらいには登っているだろう早い時間だ。
ならば何故こんなにも焦らなくてはならなかったのだろうか…?

その答えはそう…



僕は小仙丈の頂で日の出を迎えたかったのだ。



何を隠そう、この山域において、僕は小仙丈の頂から見る仙丈ヶ岳の景色が最も好きなのだ。
僕が今まで見てきた数ある山の景色の中から数えたとしても、5指に数えられるほどに。
朝日に染まる雪の仙丈ヶ岳を、小仙丈の頂から眺める…
まるで純白のウエディングドレスを纏ったかのように雪に覆われたその美しい姿が朝日に照らされ、徐々に緋色に染まっていく姿を…
決して頻繁に入る事のできない厳冬期の仙丈ヶ岳、それ故に今をおいて他に機会などそうあろうはずがない。

だがよりによってそんな大事な時に準備に手間取り、30分も出発時間を遅らせてしまったのだ!
あぁ!自分の不手際が憎い!


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徐々に雪面が緋色に染まっていく…(撮影地点1にて撮影)
待て、待ってくれ!まだ早い!!まだピークを二つも越えなければ小仙丈には辿り着けないんだ!


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『あぁぁぁぁぁぁけましておめでとうございます!』



結局僕らは日の出までに小仙丈の頂に達する事は出来ず…
2日遅れで見た今年初めての日の出は、小仙丈直下の稜線からということになってしまった。
日本最高峰の富士山、そして第二位の北岳を従えたなんとも贅沢な日の出を前にして、僕の心は 『チクショウ』 で満たされていた。
そう、1月3日に見た初日の出の裏には、実はこういう悲しいエピソードが隠されていたのだった。




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さて、気を取り直して、こちらは日の出直前のパノラマ。




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日が昇ってしまったものは仕方が無い…。
当初の目的は果たせなくなってしまったが、しかしあくまでも今日の最大の目的は仙丈ヶ岳登頂。
気持ちを切り替えてそちらに集中する事にする。

日の出と共に急激に風が強くなった稜線を一歩一歩登っていく。
ここに至るまでに相当なオーバーペースだったため、身体はフラフラ、風に振られる。


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小仙丈直下の雪面はこの登山道で一番の傾斜。(撮影地点2にて撮影)
しっかりキックステップでステップを刻んでいかなければ、ズルズルと足が滑ってしまって一向に登れない。
これはいい練習になる。ついでにダガーポジションなど、ピッケルワークの練習もしておいた。


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そんなこんなで小仙丈山頂到着。(撮影地点3にて撮影)


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残念ながら時既に遅しで、赤く染まる仙丈ヶ岳を見る事は出来なかった。
しかし天候は快晴、青空と白い峰とのコントラストが実に美しい。


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大好きな仙丈ヶ岳をバックに、いい具合に撮影してもらったので、今期のプロフィール画像に採用しよう。






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小仙丈から仙丈ヶ岳方面のパノラマ。圧巻である。

そう、この景色だ!この景色が見たかった!!
これで日の出までに間に合っていれば…どれほど美しい景色が待っていただろうかと思うと残念だ。





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甲斐駒と八ヶ岳もくっきり見える。


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そして小仙丈から仙丈ヶ岳への稜線。
ここからが本番だ、気を引き締めていかなくてはいけない。



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ナイフリッジというほどではないが、やや痩せた尾根。(撮影地点4付近にて撮影)
普通に歩く分には全く問題が無いが、風の通り道なので強風時には細心の注意が必要だ。
左側の日が当たっている雪面は雪が緩いが、右側の雪面はカッチカチに凍結している。
積雪状態によるが、左側は踏み抜きや雪崩に注意、右側は足を滑らせての滑落に注意だ。


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仙丈ヶ岳登山道における唯一と言っていい岩場の下降。(撮影地点4付近にて撮影)
慎重に下りれば何ら問題はない、ただ雪に隠れている岩にアイゼンを引っ掛けないように注意。


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仙丈ヶ岳手前のピークへの登り斜面。(撮影地点5にて撮影)
風の吹き溜まりになっているせいか非常に雪が深く、足がよく潜る。

しかし素晴らしいまでに蒼い空の色…、まるで成層圏間近のように濃いブルーだ。


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ダースベイダー卿推参ww(撮影地点6にて撮影)

しかし小仙丈ヶ岳直下で強風にあおられて以来、ここに至るまで全く風が無い。
ほとんど無風、吹いたとしても厳冬期の3000m級の風を基準とすれば、そよ風みたいなものだ。
事前に下調べしておいた甲斐があった。今回の天候判断はバッチリ的を射ていたようである。
快晴、そして風さえなければたとえ3000mの稜線であろうと決して難しいものではない。


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そしてついに藪沢カール越しに仙丈ヶ岳を捉えた。(撮影地点6にて撮影)


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ここまでくれば山頂に手が届いたも同然だ。
しかし難所が無いわけではない、気を抜かずに一歩一歩丁寧に歩を進めていくとしよう。


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個人的に一番嫌だった痩せ尾根とトラバース。(撮影地点8にて撮影)
今回は無風だったから全く問題にならなかったが、突風が吹き荒ぶ中、こんなところ歩くのは嫌だ…
誤って右手側に滑落すれば、所々頭を出している岩に身体をぶつけながらカールの底までノンストップだろう。
考えただけでゾッとする。

反面、全く平気な顔して歩いていく嫁…ちょっと待て、怖がってくれとは言わないから、もう少し危機感を持ってくれww
僕からすれば、よっぽど地蔵尾根なんかよりこっちの方がキモチワルイぞ…人それぞれ恐怖の概念は違うということか。


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そしてついに仙丈ヶ岳山頂到着!(撮影地点7にて撮影)
初めての厳冬期南アルプス、そして始めての厳冬期3000m峰の頂だ!
そしてそれが自分の大好きな仙丈ヶ岳の頂なのだから感無量というほか無い。

あぁ…しかし素人がこんなところまで来ちまってもよかったんだろうか…w


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さっきまで歩いていた稜線に人がいる。
うへー、あんなところ歩いてきたんかい…。遠くから見ると余計に急斜面に見えるから恐ろしい…。






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山頂からのパノラマ。







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富士山、白峰三山のパノラマ。
ちょうど逆光になってしまっているのであんまり綺麗じゃないが…。







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甲斐駒、八ヶ岳のパノラマ。






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大仙丈方面にはトレースが無い。
まぁここから大仙丈の方まで足を伸ばす酔狂な人もそうは居ないだろう…
厳冬期の仙塩尾根、いつかは歩いてみたいけどまだまだ早すぎる。


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仙丈小屋を見下ろす。
写真にするとこれほど陳腐なものもないけど、実際に見下ろすと高度感たっぷりだ。
万が一滑落してもカールの底で止まるという妙な安心感はあるが、しかしあそこまで滑り落ちたら多分タダじゃ済まないんだろうな…



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一時間近く山頂でのんびり。
風は強いが日当たりも良いので手足が冷える事も無く快適だった。
ところどころ雲が見え始めていたので、あまり長居するのもどうかと思い、出発の準備を開始。


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日本最高峰富士と第二位北岳を照準に…次はアレ??
いや、あれらは無理でしょうww
もっと修行します。しかしいつか登れる時が来たらいいなぁ…と野望は尽きない。


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そして、後ろ髪引かれる思いで仙丈ヶ岳山頂を後にする。
本当に名残惜しい、いつまででも居たいと思うのはどの山頂に居ても同じだ…(前回の赤岳は例外にしても)
しかし思い入れの強い、ここ仙丈ヶ岳の山頂はまた格別の想いがある。
また来よう、必ず。次はまた梅雨時かな?


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さぁ、下りますよっと。
しかし、相変わらず弱風or無風。天の采配と言ってしまえば見も蓋もないが、年末の赤岳同様実に最高のコンディションだ。


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登りで僕がキモチワルイと言ったトラバース。(撮影地点8にて撮影)
嫁も下りで下を覗き込んでようやく僕が言った意味を理解してくれたようだ。
こんなところ落ちる事を考えたら背筋が寒くなる。
躓かぬよう、踏み外さぬよう、一歩一歩慎重に、ピッケルを突きながら、アイゼンを効かせながらゆっくり下る。

ここを抜けさえすれば、あとは風さえなければ不必要に神経質になる必要がない場所だ。
昨シーズン、今シーズンと何度も何度も実戦で繰り返したアイゼントレーニングの成果をコンスタントに出せば大丈夫。
ただ闇雲に歩いていたようでも、実はちゃんと経験として蓄積されているものだ。
最近はアイゼンを引っ掛ける姿もほとんど見なくなった、毎回山に行くたびどこかで尻餅をついていた頃が懐かしく感じるほどに。


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そして最後に、小仙丈から眺める仙丈ヶ岳の美しい姿を目に焼きつけ、僕らは下山したのだった。

ありがとう。何故かはわからないけど、感謝の言葉が口からこぼれた。
愛しい仙丈ヶ岳、楽しかった、また会いに来る。必ず。


下山後は予定通り駒仙のテント場でもう一泊し、翌日の1月4日に無事下山することができた。
ルートは登ってきたルートと全く同じなので詳細は割愛させていただく。
ただ疲れた身体に長い長い河原歩きは非常に堪えたとだけ言っておこうと思うww




今回の山行を振り返って。
年末の赤岳山行は、予期せぬの偶然が重なり、思いもよらぬ好条件のおかげで結果として登ることが出来てしまったという、なんとも達成感の無い山行だったことは前のブログで触れたとおり。
それを踏まえて僕は考えた。
天候変化も、それに付随する予定変更も、少なくとも自分の想定の範囲内でなければならないのだと。
ありとあらゆる可能性を吟味して、いかなる状況変化にも対応できる計画を立てなければならないのだと、より強く感じたのである。

今回仙丈ヶ岳に登るにあたり、僕は毎日のように天気図と天気予報とにらめっこしていた。
特に2泊以上の場合、山行中の天候をどれだけ把握しているか、現地で天候の変化にどれだけ対応できるかが非常に重要になる。
それにはやはり、事前にある程度天候を読んでおかなければならない。
山屋としてはある意味当然のスキルなのだろうが、僕はまだまだレベルが低い事を思い知らされた。

しかし、今回入山前に立てた天候予測は十分実用に足るものだったと自負している。
が、必ずしも次も上手くいくかどうかと言われれば正直わからないというのが現状である。
技術や知識というものは一朝一夕で身につくものではない。
繰り返し繰り返し経験を積み重ねていく事で、あたかも刃物を研ぐかのように精度を研ぎ澄ませていくものだ。
そういう意味では、僕は今回刃と砥石を手にしたに過ぎない。ここからどう研ぎ澄まして形にしていくかは、全て己の努力次第だ。

登山は言ってみれば所詮は遊びである。
だがしかし、一歩間違えれば命を落とす可能性も秘めた、危険な遊びという側面も持っている。
遊びだからこそ、より安全に、そしてより真剣に向き合わなければならないと僕は思う。

2011年の僕の抱負は 『安全登山』

それを実現させるために、技術的にも、知識的にももっともっと学ばなければならない事が多々ある。
年末年始の赤岳、そして仙丈ヶ岳を通して僕はその想いを強くしたのだった。






さて、それとは少々話が離れてしまうのだが…実は1月3日の仙丈ヶ岳下山時に


僕は財布を拾ったのだ。


発見場所は小仙丈ヶ岳直下の急斜面。尻セードの跡に埋まっていたところを見ると、尻ポケットにでも入れていたのだろう。
身分証のわかるものはないかと中身を確認させていただいたのだが、残念ながら免許証や保険証といった身分証明書となるものは入っていなかった。
中にはキャッシュカードやクレジット、領収書などが入っていたから、名前だけは判明したのだが…
しかしそれだけの情報では連絡のとりようがない。

財布に入っていた駒仙小屋のレシートを見るに

1月2日の10時に二人分で受付をしており、単独ではなくペアで入山。
恐らくテントは2人用以上か、もしくはソロテントを2張、ということになるだろう。

3日に僕が仙丈ヶ岳ですれ違った人でペアで入山していた方は長衛荘泊の方だったので違う。
それ以外の方は皆単独の方たちだったので、おそらく違うだろう。
と、いうことはおそらく2日のうちに仙丈ヶ岳を往復したものと考えられる。

僕がテント場に帰ってきてから、張ってあるテントの方(単独の方を除く)に聞いて回ったが該当者は居なかった。
同じく長衛荘でも聞いてもらったが該当者はなし。と、いうことは3日中に下山してしまったものと考えられる。




さて、ここで是非僕のブログを読んでいる方に協力していただきたいのですが…
上記に該当する方に心当たりがある方は、是非御本人に連絡していただきたいのです。
財布自体は長衛荘に預けてありますし、カード等から名前は判明しておりますので、無くした本人が長衛荘まで連絡していただければ間違いなく手元に戻るはずです。
もし知り合いで、正月に仙丈ヶ岳で財布失くした方がおられましたら、連絡していただけるようよろしくお願いします。


↓ 新年早々とんだお年玉を拾ってしまいましたが、ちゃんと届けましたよww馬鹿正直者にポチッとよろしく(-´▽`-)

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by misawa_re7 | 2011-01-08 00:39 | 山行記録 2011


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