【山行記録】 雪山登竜門 念願の天狗岳へ行ってきた…が 〔2010.12.18~19〕
昨シーズンの北八ヶ岳縦走の際、にゅうから眺めた天狗岳。
当時アイゼンとピッケルを持っていなかったため踏む事が叶わなかった2つのピーク。
ピッケルとアイゼンを買ったら必ず登ろうと誓った天狗岳。そして今シーズン、装備の上では登るに足るだけのモノを揃えたつもりだ。
期は熟した。万全の準備をもって望んだ天狗岳山行…だったのだが…。
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2010年12月18日 (土) 天候:曇り
【気温】 【テント場】 -8℃ 〔PM4:00〕
【初日】 〔赤線〕 渋の湯~唐沢鉱泉分岐~黒百合ヒュッテ(テント泊)


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2010年10月19日 (日) 天候:快晴
【気温】 【テント場】 -10℃ 〔AM5:00〕
【2日目】 〔青線〕 黒百合ヒュッテ~中山峠~東天狗岳~西天狗岳往復~中山峠~黒百合ヒュッテ~唐沢鉱泉分岐~渋の湯


・ 高低差、距離、コース概要は上記の通り。
・ 地図上の通し番号は、これからブログに添付する画像の撮影したポイント。




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ここに一枚の写真がある。
これは昨年の3月、北八ヶ岳初級コース縦走と名づけた1泊2日縦走の時に撮影した天狗岳の写真である。

渋の湯から入山し、にゅう往復~中山~高見石。2日目に麦草峠~茶臼山~縞枯山の後北横岳を往復してピラタスロープウェイで下山するというルートを想定していたのだが、僕の股関節の怪我というアクシデントもあり、縞枯山と北横岳を中止。
それだけでは飽き足らず、開始早々コンパスが壊れたり、中山ではトーレスが途切れた中ホワイトアウト一歩手前の猛吹雪に遭ったり、丸山では誤トレースを追って道迷いを起こすという空前絶後のトラブル山行の苦い思い出として僕の記憶に刻まれている山行でもある。

そんな当時の僕の目に映った天狗岳の険しい山のシルエットは、酷く不吉で、そしてとても近寄りがたく思えたのだ。
しかしその反面、いつかアイゼンとピッケルを手にする時があったならば、この天狗岳に登りたい。
この時、僕は密かに心の内に天狗岳登頂の目標をそっと掲げていた。


そして時は過ぎ、僕は密かなる悲願の地でもある天狗岳への登路に就いていた。
あの日から今日までに、僕の技術が飛躍的に向上したわけではない。ただ道具だけが僕に不釣合いな程、立派に揃っただけだ。
雪山入門の山として最もポピュラーであろう天狗岳。自分の中でそれに登る 『装備』 という最低限の資格はクリアしたつもりだ。
あとは天狗岳に登ることで技術を学ぼう…登ることを夢見た頂のひとつ、天狗岳に己をぶつけることができる喜びに、この日の僕のテンションはかつてないほどに最高潮だったのだ。



そう…





あの事件が起きるまでは…




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話を戻そう。
そんなわけで僕らは渋の湯から黒百合ヒュッテを経て天狗岳へと登る登路に居た。(撮影地点1にて撮影)

渋の湯からの登り始めは若干凍結している。
昨シーズンここに来た時は3月だった事もあり、盛大に凍結しており、ツボ足で非常に苦労した区間でもある。
渋の湯で身支度を整えていたツアーの集団につられる形でアイゼンを装着したのだが、実際に凍結していたのはほんの一部。
後はほとんど地面が露出しており、これでは木の根を傷つけてしまうだけだと判断し、ものの5分でアイゼンを外してツボ足に移行した。


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最初の分岐2地点を過ぎた辺りから若干積雪が増す。(撮影地点2の分岐を過ぎた場所にて撮影)
しかしまだ足場を選んで歩けばツボ足でも十分対応可能。


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渋の湯から登りきると稜線に出る。(撮影地点3にて撮影)
ピーク付近には分岐があり、パノラマコースを経由して唐沢鉱泉に下るルートと黒百合平へ向かうルートとの分岐になっている。
このあたりからは十分な積雪量。
はっきり言ってまだ全然アイゼン不要な状態だが、荷物の重量が重量だけに (僕で28kg前後) 一瞬雪に足をとられてバランスを崩すだけでも無駄に疲れる。安全面と疲労面を考慮してアイゼンを装着する事にした。


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途中何箇所か金網の上を通過するのだが、アイゼンを引っ掛けやすいので注意。(撮影地点4付近にて撮影)
ちなみに積雪量が増えれば自然と金網が雪で埋まってただの橋になる。


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徐々に樹氷も現れ始め、白一色の様相を呈してきた。(撮影地点4付近にて撮影)
しかし予想以上に天候が悪い…空は雲に覆われ真っ白、時折雪がパラつく場面も。


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雲の流れが凄まじく早い。(撮影地点5付近にて撮影)
そして上空では風が吹き荒れているのだろう、激しい風の音が木々の間から聞こえてくる。
雲の切れ間に青空が見え隠れしては消えていく…こんな天候で天狗岳に登るんじゃなくてよかった。


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黒百合ヒュッテが近くなるに従い、沢が完全凍結してスケートリンク状に。(撮影地点5にて撮影)
薄く積もった雪の下は完全に凍結していた。
ちなみに昨シーズンここを訪れた時には、凍った沢は深い雪の下に埋まっていたので、このような状態になっているとは想像できなかった。
そんなわけで、唐沢鉱泉の分岐あたりから黒百合ヒュッテまでの間はアイゼン推奨。




ちなみに、この日の僕は凄まじく調子がよかった。
アホ程に重い荷物を背負いながらもいくらペースを上げても全然疲れが見えない。
夜勤明けという妙なテンションも手伝ってか、この日のコンディションは過去最高だった。
この調子なら2日目は全ての荷物を背負って両天狗を踏み、西尾根から下る事もできそうだった。むしろそのつもりだった。




だが一本の電話が全てを台無しにしたのだ。




「月曜日、人が足りなくなったので仕事に出てきてくれ」

そういった旨の電話だった。
月曜日は別件の用事があったため休みをとっていたのだが、半日もあれば終わる用事だったのでもう半日は休養に宛てる予定だった。
だがそういったわけで、月曜日は急遽仕事に行かなくてはならなくなってしまったのだ。
まぁ、休養する時間が減ってしまった事に関してはそれほど問題はなかった。
2日目を早めに切り上げて、山から帰ってゆっくり休んで疲れをとればいいだけの話だし、そもそも今回の山行の行程はそれほど長いわけではなく、体力的にはさほど厳しいものではなかったからだ。

そう、体力面は問題なかったのだ…だがこの一本の電話によって


メンタル面は粉々に打ち砕かれてしまった。


過去に類を見ないほどに最高潮だった僕のテンションは、一気にマイナスにまで降下した。
いや、逆にピンピンにまで張り詰めていたからこそ、それをブチ切られた時の反動が凄まじかったのかもしれない。
だが、初日はまだ表面上平穏を保っていた。
この時投下された爆弾が実際に炸裂するのはまだしばらく後の話だ…



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黒百合ヒュッテに到着。(撮影地点6にて撮影)
だいぶ風が強く、停滞しているとどんどん体が冷えていく…。
早急にテントの受付を済ませ、手早くテント設営をすることにした。


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嫁はハードシェルを着てテント設営作業をしていた、もちろんこれが正解。
しかし僕は正直着替えるのすらメンドクセェ精神状態だったために、ソフトシェルのまま作業を続行。
身体の芯からごっそり熱を持っていかれてしまい、テント設営後暖かい晩御飯にありつくまで体が小刻みに震えている状態だった。


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時折晴れ間も見え隠れするが、テント場まで日差しが届く事はない。
ちなみにこの時点で気温はおよそ-10℃前後。
この時期にしては暖かいくらいの気温だが、下界で生活している身体自体が寒さに慣れていないのか十分寒い。

この日の晩はメリノウールのアンダーを着るのを忘れて寝てしまったため、何度か胸の辺りに寒さを感じて目が覚めてしまった。
今までで最も寒かったテント泊が外気温-15℃、その時は問題ない快眠だった。
その時と違うのはメリノウールのアンダーだけである。あんなペラペラのウェア一枚無いだけでこうまで違うのかと驚いてしまった。


そして初日の夜は更けていった…




【2日目】

この日の起床予定時間はAM4:00。
朝早めに起きてゆっくり身支度を整え、荷物を全部背負って東、西と天狗岳を踏んで西尾根へ下る予定だった。

だが、目覚ましを鳴らしたにも関わらず、鳴ったのを確認して一度起きたにも関わらず、気付いたらAM4:40だった。
過去にもあまりの眠さに起床時間を遅らせた事はある。しかし、その際は必ず再度設定した起床時間に携帯のアラームを再セットした上で寝ていた。
だが、今回はただただ40分間だらだらと余計に寝てしまった。山に登るモチベーションはおろか、起きる事すらもダルかったのだ。
この時、昨日投下された仕事の電話という精神爆弾が爆発を起こしており、僕のメンタルは最低最悪だった。


『天狗、めんどくせぇ…もう登らずに帰るか』


寝起きざま、僕の偽らざる心の声だった。
だが嫁と二人で来ている以上、その申し出はあまりに理不尽極まりない上に身勝手すぎる。
しかし、過去最低、全くノレないモチベーション、そんな状態で全荷物背負って西尾根は無理!
計画を変更し、僕が最低限の日帰り装備を背負い、嫁は空荷で天狗岳往復し、また黒百合ヒュッテまで戻ってくる事にした。


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結局何だかんだでテント場を出発したのはAM6:00。(撮影地点7にて撮影)
気分は乗らないながらも体調自体は悪くなく、昨日と同様体は羽のように軽かった。
モチベーションは上がらない…しかし体調が良いのは幸いだった、心は塞ぎこんだまま動かないが、身体は歩を進めることができたのだから。
だがしかし、空がだんだん明るくなり、美しい朝焼けが見え始めた頃…僕は再び自分の犯した失態に気付いてしまった。


サングラス…テントに忘れちまった。


何度も連呼して申し訳ないが、この時僕は最っっ高にメンドクセェ気分になってしまった。
どう見繕っても今日の天気は快晴。サングラスなしで歩くのは雪目のリスクがあまりに高すぎる。
ここまで歩いてきた時間はおよそ20分、いずれにせよテントまで引き返してサングラスをとってこなければならないのは必然だ。
上がらないテンション、保てないモチベーション…
このままテントに帰ってしまったら、もうすぐにでも撤収して下山してしまうのではないかと思うくらいに最低最悪の精神状態。


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だが、美しい天狗岳の雄姿が、辛うじて僕をその場に繋ぎ止めた。(撮影地点6にて撮影)

『帰っちゃうのかい??』

『いや、登るよ…』

そんなやり取りをした気がした。もちろん気がしただけだけれど。


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本当に美しい朝日…(撮影地点8て撮影)
だがそれを見ても何一つ心に落ちてこない、昨日が異常なハイテンションだったとするならば、今日は尋常じゃないローテンションだ。
原因はわかっている、山に持ち込んではならない下界のしがらみ、 『仕事』 という名のヘドロのようなしがらみが僕の心にこびりついて離れなくなってしまったのだ。
失敗した、電話なんて出なければよかった…後悔したところで後の祭りだ。


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美しい山並をバックに、楽しい雪上ハイクのはずの登りも…(撮影地点9にて撮影)


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白一色の美しい斜面も…
全てが全て重苦しい空気に支配されてしまった。ストレス発散に来たのに…何なんだよコレ…
山は悪くない、わかっている。おかしいのは僕だ、間違いない。
山に来たのに山の事を全く考えられない、スイッチが完全に切り替わってしまったかのようだ…。

こうなってしまったらとるべき手段は2つに1つ、この時点で山行を切り上げて早々に撤退するか…あるいは。
僕は迷うことなく念のためにと嫁が持参して来てくれた常備薬を口にした。
これでも状況が好天しないのならもう撤退するしか道はない。


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おかげさまで、素晴らしい好天が良い方向に作用したのか、あるいは山の澄んだ空気がそうさせたのかは定かではないが、標高を稼ぐごとに少しずつ心がクリアになっていくのがよくわかった。
そして、東天狗山頂に至る頃には心も落ち着きを取り戻してきた。(撮影地点10にて撮影)
これでいい、山はこうでなくてはいけない…。そう、せっかく山に来たのだからやはり山を楽しめなくては全く意味が無い…。


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こんなにも綺麗な山並を眼前にして、存分に感動できないのは悲しいが、今日はここに立てただけで十分に意味があった。






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北八ヶ岳方面のパノラマ。






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南八ヶ岳方面のパノラマ。





この時点で、僕は西天狗には行かず撤退するだろうと嫁は予想していたようで、西天狗は諦めていたらしい。


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だが僕の足は西天狗に向いた。(撮影地点11にて撮影)
心はバッキバキにへし折られていたけど、初志貫徹の心までは折る事ができなかったようだ。


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次はあれだってさww


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鞍部より東天狗。

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同じく西天狗。


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西天狗直下の岩場。(撮影地点12直下にて撮影)
そういえば今回全然モチベーション上がらなくて、岩場での写真が一切無い…。
そもそも天狗岳、半分くらいが岩の山なのに…これではこのレポ何の参考にもならんなww



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西天狗山頂到着。(撮影地点13にて撮影)





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南アルプス、中央アルプス、御嶽山、乗鞍、穂高、北アルプスのパノラマ。





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その景色の果てに、何を思うのか…。


この後風も穏やかな西天狗の山頂にて湯を沸かしてのんびりティータイム。
明日の仕事の事を考えると、少しでも早く下山して体を休めたいところだが、現時点で仕事の事はスッパリ頭の中から消していた。
やはり山には余計なしがらみは持ち込むべきではない。
全て忘れて山にだけ集中する…それが最高の形だと今回心から実感した。


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あとはのんびり下るのみ。
ここからはほとんど写真が無いので割愛させていただく。
いかんせん山頂を踏めた事自体が奇跡のようなメンタルコンディションだったのだ、多少なりとも写真があるだけで御の字である。
レポートとしては全く参考にならないものになってしまったが、そのへんはどうか大目に見ていただきたいと思う…。


天狗岳…本当に最高の天気の一日だった。だが、決して最高のコンディションとは言えなかった。
これで心も晴れやかだったらどれほどよかったろうか…だかこればっかりは仕方ない、心は時に身体よりも遥かに手に負えない時がある。
やはり山は天候はもちろん、心身ともに充実していなければ楽しくない。
ここにはまたいつか必ずリベンジに来ようと思う。
次来る時は、バラバラになって下界に置き去りにしてきてしまった心もしっかり連れてこなければなるまい。



今回、僕の心情を反映したブログになってしまったため、非常に読み苦しい文章になってしまったこと、誠に申し訳ありません。
写真撮影数もいつもの半分以下、歩行途中にほとんどカメラを取り出していないため、道中の写真はほとんど皆無。
それほどまでに、今回の天狗岳山行は、僕にとってノれない、ある意味では辛い山行だったわけです。
今回の山行を通して、僕は自分の人生について色々と考えさせられる羽目になりました。
それは山に限らず、私生活、あるいは仕事といった下界のしがらみも全て含めて。
おそらく近いうちに人生に何かしらの転機が訪れるでしょうが、ブログも山も、変わらず続けていけたらなと思っています。
その時はまた変わることなくお付き合いいただけると幸いです。


↓ 上がらぬテンション、保てぬモチベーションの中、何とか登りきりました。応援ポチを是非よろしく(-´▽`-)

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by misawa_re7 | 2010-12-21 22:56 | 山行記録 2010


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