【山行記録】 級友のテント泊デビュー そして仙丈ヶ岳リベンジへ 後編
『タイ氏』

僕の古くからの友であるが、彼と共に行った山行の全てが曇りという、驚異的な曇天率の持ち主。
そんな彼を伴って行った、先日の仙丈ヶ岳。そこには予想に反し、突き抜けるような美しい青空が広がっていた。
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仙丈ヶ岳 (せんじょうがたけ) 【標高3033m】

仙丈ヶ岳は長野県と山梨県の県境に位置する、南アルプス最北部の3000m峰である。
仙丈ヶ岳、小仙丈ヶ岳、大仙丈ヶ岳の3つのピークを擁し、それぞれがカールを抱いている。
北沢峠を挟んで隣にそびえる甲斐駒ヶ岳が、花崗岩に覆われ高山植物が少ないのに対し、それとは対照的に国内屈指の豊富な高山植物と非常に膨大で穏やかな山容から、 『南アルプスの女王』 とも呼ばれ、広く親しまれている。。
かつては南アルプス最奥峰として、容易に人を寄せ付けぬ山であったが、南アルプス林道の開通を期に格段にアクセスがよくなり、今や3000m級の入門として、数多くの登山者が訪れる人気の山となった。
百名山のうちの1峰。

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2010年8月29日 (日) 天候:曇り
小仙丈ヶ岳経由往路(北沢駒仙小屋~大滝の頭五合目~小仙丈ヶ岳~仙丈ヶ岳山頂)
馬の背経由復路(仙丈ヶ岳山頂~仙丈小屋~馬の背~馬の背ヒュッテ~藪沢小屋~大滝の頭五合目~北沢駒仙小屋)

・ 高低差、距離、コース概要は上記の通り。
・ 地図上の通し番号は、これからブログに添付する画像の撮影したポイント。


仙丈ヶ岳リベンジ 前編 はこちら


思えばそれは晴天の霹靂だった。

そもそも今回の仙丈ヶ岳、曇天率の高いタイ氏を連れているというのは冗談としても、天候はさほど期待してはいなかった。
事前の天気予報では曇りの予報だったし、先日のブログでも書いたとおり、前日は昼間から山頂付近はガッスガスだったからだ。
そもそも今シーズンは夏山縦走を筆頭に僕らもあまり天候に恵まれておらず、この時点で年内の山行の晴天率が20%未満という極めて異例の状態であり、登れば天候が悪くなり、行かねば晴れるという負のスパイラルに陥っていた。
変に天候に期待しないほうが落胆せずに済む…、そう思わざるを得ないほど今年の僕らはついていなかった。


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しかし蓋を開けてみれば予想を、そしてタイ氏の曇り男の定説を覆す天候がそこには広がっていた。(撮影地点1にて撮影)


【AM5:20】
僕らは仙丈ヶ岳に登る途上にて、美しい日の出を眺めていた。

この日の起床はAM3:00。
山屋にとっては驚くほど早い時間ではないが、山を始めたばかりのタイ氏にとっては十分に早い時間に感じただろう。
起きてこれるか心配だったが、それは杞憂に終わった。
僕のツレには、朝の7時ですらまともに起きて来れない奴が多いのだが、その点タイ氏は朝に強くて助かる。
まぁ普段海外出張している奴だし、基本的に環境適応能力は高いのだろう。

軽く朝食を摂りながらゆっくり準備をしつつ、AM4:10に北沢駒仙小屋のテント場を出発。
ヘッデンを点け、真っ暗な登山道を足元に注意しながらゆっくりと歩く。
そして上記のAM5:20の日の出の写真に至る。




【AM5:40】
大滝の頭五合目通過。
ここで休憩するつもりだったのだが、団体さんが先に陣取って日の出を眺めていたため休憩スペースがなかった。
ここまで軽い5分休憩以外まともに休憩を挟んでいなかったのだが、仕方なく小仙丈まで頑張って登ってしまうことにする。
ちなみに、大滝五合目に至るまでの登山道の状態だが、特に特筆すべき点も危険な箇所もない。
特徴がないのが特徴といっても一向に構わないくらいの、非常にオーソドックスな登山道である。


今回は大滝の頭分岐から小仙丈経由の稜線ルートを往路、馬の背経由のルートを復路とした。
個人的にお勧めは小仙丈経由の稜線ルートで、文句なしにこちらのルートの方が圧倒的に南アルプスの展望が良い。
馬の背の方はというと、一部甲斐駒方面の展望が開けているのと、馬の背から仙丈ヶ岳までの稜線上からの中央アルプス、御嶽、乗鞍、穂高連峰、北アルプスの展望が開けている。
とはいえいずれも遠望であり、天候が安定しなかったりモヤっていたりするとキレイに見えない。
登りも下りも稜線ルートでも一向に構わなかったのだが、山バッジの関係上どうしても小屋に寄らねばならず、馬の背ルートを復路として設定する事となった。


大滝の頭分岐から小仙丈方面へ少し登ると展望が一気に開ける。
中央アルプス方面とお目当ての仙丈ヶ岳の姿は見ることができないが、このあたりからの南アルプスの展望は山頂からの展望とも全く遜色がない。
素晴らしい景色と、稜線の風を感じながら、小仙丈までの稜線をのんびり歩く。



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【AM6:18】
小仙丈ヶ岳到着。(撮影地点2にて撮影)
全く文句のつけようのないほどの素晴らしい展望がそこには開けていた。


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中学登山で登った御嶽山以来、実に20年ぶりの3000m級の稜線に、タイ氏も感動しっぱなしである。




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小仙丈ヶ岳から北岳及び仙丈ヶ岳方面のパノラマ。





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思えば今年の6月
高校時代に登って以来、およそ10年ぶりの仙丈ヶ岳登頂を果たすべく臨んだものの、膝痛と悪天候で撤退を余儀なくされた仙丈ヶ岳。
あの時、膝の痛みに泣きながら、真っ白で何も見えないこの小仙丈ヶ岳の頂で再訪を誓ったのは過去の話。
この時痛めた膝は山に登るたびにその姿を現し、もう山に登ることは叶わないのではないかと思いつめる程、散々僕を苦しめた。
今思えばたったの2ヶ月だったのだけれど、それはあたかも永遠であるかのように僕には感じられた。

そして今、膝の痛みを克服し、最高の天候の下僕は再び仙丈ヶ岳の山頂に手が届くこの場所に居る。
10年ぶりの仙丈ヶ岳との再会としては、文句なしに最高のシチュエーションだ。
6月の仙丈ヶ岳の撤退劇も、今日というこの日を迎えるための天の采配だったのではないかと思えてくる程に…。


時間の許す限りいつまででも仙丈ヶ岳を眺めていたいが、時間に限りがあるので名残惜しいが先に進む事にする。
と、言っても、何だかんだでここに30分ほど滞在していたのだがww


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小仙丈から仙丈ヶ岳までの稜線はまさしく天空のトレイルだ。(撮影地点3にて撮影)
一見険しそうにも見えるが、見た目よりも遥かに歩きやすいルートである。


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途中に一箇所だけ手を使って登る(厳密には下っているのだが)場所がある。(撮影地点4にて撮影)
仙丈ヶ岳の中では唯一の岩場だが、それほど難しい場所ではない。


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突き抜けるような蒼い空に山の緑。たまんねぇ~!
久しく忘れていた快晴の山歩きに、心も体も最高潮だ。


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手前に見えるピークを乗り越すと、藪沢カールと共に仙丈ヶ岳山頂が目の前に広がる。(撮影地点5にて撮影)
遠くに見えるが、ここまで来ればもう山頂は目と鼻の先。
少々足元がザレているので注意しながら、山頂までの一時を堪能しながら一歩一歩歩く。


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気付けばもう山頂直下。仙丈ヶ岳山頂は目前だ。




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【AM7:35】
仙丈ヶ岳山頂到着。(撮影地点6にて撮影)


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オッサンみたいなスタイルのタイ氏も記念撮影ww




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南アルプス方面のパノラマ。



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鋸岳に甲斐駒ヶ岳、奥に八ヶ岳。


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富士山と北岳、間ノ岳、農鳥岳。


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南アルプス南部の山々。




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左から恵那山、中央アルプス、それに重なる形で御嶽。次いで乗鞍、穂高連峰、北アルプス。

先日の北アルプス縦走の黒部五郎岳に続き、今年の夏山ではようやく2度目の快晴の山頂だった。
終始曇りを引き当ててきたタイ氏を伴っての山で快晴に巡り合う事になるとは…予想だにしなかったがww


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2度目にしてようやく立つことが出来た、10年ぶりの仙丈ヶ岳山頂。
思えば10年前、山のやの字もよくわかってなかった高校生の僕が踏んだこの頂。
かつては先生や先輩に引き連れられ、右も左もわからない、山の名前もよくわからない、言ってみればお客様待遇で登った山。
それはそれで楽しかったし、いい経験にはなったと思うけど、それは 『登った』 のではなくて、『連れて来てもらった』 だけだ。
10年という時を経て、ようやく僕は自らの意志で、自らの足で、本当の意味でこの仙丈ヶ岳の頂を踏みしめている。

感無量である。

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感無量と言えば、今回仙丈ヶ岳の山頂に持ち込んだ物がある。
山の山頂には明らかに不釣合いなこの包装紙の中身は…



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僕の誕生日ケーキである。

実は仙丈ヶ岳に登る2日前の8月27日は僕の誕生日だった。
しかしその日は山に行く前日、かつ夜勤があり、悠長にお祝いなどしている時間もなかったため、この仙丈ヶ岳の山行に合わせて嫁が手配しておいてくれたのである。
コレは僕の大好物のカントリーチーズケーキというもので、地元のケーキ屋さんのオリジナルだ。
快晴の空の下、大好きな仙丈ヶ岳の山頂で、大好物の誕生日ケーキを食べる事が出来た。

もはや何も言う事はない。今日は最高の日だ!!



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そんなわけで、最高の山頂を後にし、一路帰路に着くことに。(山頂直下にて撮影)
下りは当初の予定通り馬の背ルートを下る事にする。
本音を言えば小仙丈経由の稜線ルートを再び歩きたかったけれど、馬の背ヒュッテで山バッジを買うため涙を呑んで我慢である。
カールのど真ん中に見えるは仙丈小屋だ。


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【AM8:30】
仙丈小屋到着。(撮影地点8にて撮影)
冷たいジュースでも買って休憩しようと思ったのだが、冷たい飲み物は全て売り切れていた…。
コーヒーはあるとの事だったが、コーヒーという気分でもなかったので今回はパス。

ちなみにここには水場があるのだが、この時既に涸れていた。
水を入手したい場合は馬の背ヒュッテで汲んでくるか、小屋の水を有料でわけてもらうしかない。
雪解け水を飲料水としている小屋は、温暖化の影響で年々水の調達が難しくなるのだろうか??


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仙丈小屋を後にし、どんどん下る。
写真の通し番号を書くのを忘れてしまったが、馬の背ヒュッテへの分岐のやや上の辺りからの撮影だったと思う。
気付けば仙丈小屋もあんなに小さくなってしまった。




【AM9:00】
馬の背ヒュッテ到着。写真は撮り忘れてしまった。
ここは沢の水を汲み上げており、小屋の脇の水場で自由に水を補給する事が出来る。
馬の背から登る場合、水の補給が必要な人はここで汲んだ方が無難だろう。

馬の背ヒュッテでオリジナルの山バッジとコーラを一本購入して暫しの休憩。


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馬の背ヒュッテから大滝頭まではいくつかの小さな沢を渡渉する。(馬の背ヒュッテ直下にて撮影)
ここは馬の背ヒュッテ直下の沢。
上流に見えている四角い物体は沢の水を汲み上げるポンプのようだ。
ということはここの水は基本的に飲めるということか??

冷たい沢の水で軽く手を洗いつつ出発。


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甲斐駒ヶ岳の雄姿。(撮影地点9付近にて撮影)
馬の背経由のこちらのルートは甲斐駒ヶ岳を至近に見ることができる。
しかし、馬の背の稜線に出るまでは他の山はほとんど見えない地味なルートと言える。
ただ、時期がよければ植物は豊富なようだ。
今回はシーズンとしては遅かったのでピークが過ぎており、ほとんどいいところは終わっていた。



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【AM10:45】
下山。
PM1:00のバスに乗りたかったので、テント撤収時間も考えて最低でも正午までには下ってきたかったのだが…
張り切りすぎたのか思いの他早く着いてしまった。


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テント場から見る小仙丈ヶ岳は全くガスの出る気配がない。
仙丈ですれ違った小屋泊のおばさんの話では、昨日はAM9:00くらいからガスが沸いてしまって展望が全然なかったとのこと。
しかしこの日は昼近くなっても全然ガスの気配もない。
これは下りに稜線コースを取っていればさぞ眺めが良かったのだろう…少し後悔したが後の祭りである。



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沢で冷やしておいた梨を食べつつ、のんびりテントを撤収。
前日といい、今日といい、今回の山行は実にのんびりしたものだった。
どうしても1泊となると、登れるだけ登りたい気持ちになってしまうのは山屋の性だが、たまにはこうやってのんびりテント場で過ごす時間というのも悪くないと思う。
今回は初心者のタイ氏を伴っての山行だったから、このくらいのペースでちょうど良かったのだろうと思う。

コースタイムは以下。

【AM 3:00】 起床
【AM 4:10】 北沢駒仙テント場出発
【AM 4:45】 小休止
【AM 4:50】 発
【AM 5:25】 大滝頭五合目通過
【AM 6:18】 小仙丈ヶ岳到着
【AM 6:45】 発
【AM 7:35】 仙丈ヶ岳山頂到着
【AM 7:50】 発
【AM 8:30】 仙丈小屋到着
【AM 8:45】 発
【AM 9:00】 馬の背ヒュッテ到着
【AM 9:20】 発
【AM 9:45】 大滝頭五合目通過
【AM10:45】 北沢駒仙テント場到着


総評

今回親友のタイ氏のテント泊デビューの地として選んだここ仙丈ヶ岳だったが、結果として最高のコンディションだった。
当初は曇天もやむなしと覚悟はしていたが、雲などどこへやらといった素晴らしい快晴である。
そして僕の10年越しの仙丈ヶ岳への再訪と、梅雨のシーズンのリベンジも同時に最高の形で果たす事が出来た。
僕にとって思い入れの強いここ仙丈ヶ岳の山頂を、快晴で迎える事が出来たのは素直に嬉しい。


さて、総合的にここ仙丈ヶ岳は南アルプス山域の中では比較的難易度が低く、3000m峰デビューの地としては最適と言える。
道中危険な場所も少ないし、梅雨時の僕らのように意図的にシーズンを外さなければ、人とすれ違わないなんてこともまずない。
累計標高差±2000と、少々体力を必要とするかもしれないが、特に技術的に要求される事もないので、低山、2000m級と段階を踏んでステップアップしてきた人ならば何の不安材料もなく登ることが出来ると思う。
悪天候さえ避ければ、初心者でもいとも簡単に登れてしまう、非常にアクセスの良い山だ。

かつては最低でも1泊を必要とした仙丈ヶ岳だが、今や日帰りすら可能になったのにはやはり南アルプス林道の存在が大きい。
開通当時、賛否両論で大きな問題となった南アルプス林道だが、今の北沢峠の混雑ぶりを見るに、やはりニーズはあったのだ。
自然破壊が最大の懸念材料とされた南アルプス林道。
開通してしまった以上、あとは僕ら登山者一人一人のモラルで自然を守っていくしかないだろう。

話が逸れたが、バスの時間という縛りは存在するものの、ここ仙丈ヶ岳は日帰りも可能な山である。
長野県側からだと朝の6時発の始発から、午後4時の最終までの時間がタイムリミットとなる。
厳密には始発の北沢峠到着が7時なので、実質行動時間は9時間ということだ。
仙丈ヶ岳のコースタイムは、最短往復でおよそ6時間半程度なので、山頂での休憩を含んでも決して無理な数字ではない。

ただ、個人的な意見からすると、やはり北沢峠で1泊、もしくは山小屋泊するのが理想的に思う。
夏山シーズンはどうしても午後に近づくにつれ、山頂付近ではガスが発生する確率が高くなってしまう。
始発バスに乗り、7時から登り始めたとして、頑張って登っても山頂に着く頃にはどうしても10時前後になるだろう。
やはり理想を言えば山頂には8時、遅くとも9時には到着していたほうが、好天に恵まれる率も高い。
もちろん1泊で仙丈と甲斐駒の両方を登るのも良いが、今回の僕らのように前日入りしてテント場でのんびりするというのも案外悪くない。
前編で前述したとおり、北沢駒仙小屋のテント場はテント泊デビューの地としても最適な場所だ。
初心者を伴ってのテント泊ならば、やはり前日入りして体力を充実させ、翌日早朝出立で早い時間に山頂に立ち、早い時間に下山するという今回のプランが最適と思う。



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by misawa_re7 | 2010-10-22 17:51 | 山行記録 2010


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