【山行記録】 北アルプス縦走4泊5日 雲ノ平、黒部源流、そして鷲羽へ! 2日目
4泊5日の北アルプス夏山縦走も2日目を迎えようとしていた。
予想に反し、当初最も危惧していた膝痛は鳴りを潜め、縦走初日としては最高の滑り出しだった。
反面、徐々に回復する予定だった空模様は思いの他芳しくなく、僕らの行く手に暗い影を落とし始めていた…。
果たして僕らは無事に雲ノ平へ到達する事ができたのだろうか!?
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今回の縦走の概要は、以前のブログで触れたとおり、雲ノ平、黒部源流周回ルートである。

1日目【赤線】 折立から入山し、太郎平小屋を経て薬師峠キャンプ場で一泊。
2日目【青線】 薬師沢へ下り、雲ノ平キャンプ場にて一泊。
3日目【緑線】 祖父岳、岩苔乗越を経て水晶岳往復。その後ワリモ岳、鷲羽岳を経て三俣山荘にてテント泊。
4日目【橙線】 双六小屋、双六岳を周回して、三俣蓮華を踏み、黒部五郎小舎にてテント泊。
5日目【紫線】 黒部五郎岳、北ノ俣岳を経て太郎平小屋へ、その後折立へ下山。


総行程距離 約55km

累積標高差 +4400m -4400m 合計 約8800m


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2010年8月14日(土) 天候:雨
太郎平~雲ノ平 (薬師峠キャンプ場~薬師沢~雲ノ平~雲ノ平山荘~雲ノ平キャンプ場)

・ 高低差、距離、コース概要は上記の通り。
・ 地図上の通し番号は、これからブログに添付する画像の撮影したポイント。

北アルプス縦走4泊5日 1日目はこちら




【AM4:30】
起床。
夜半から朝方にかけてだいぶ派手に降雨があったようだが…寝ていて全く気付かなかったww
そういえば夜中に目を覚ました時、雨がテントを叩く音を夢うつつに聞いたような聞かなかったような…。
おかげさまで好立地に設営したことと、事前に水路を確保しておいたおかげもあり、テント及び周囲への浸水はゼロ。
しかし掘った水路を水が流れた形跡があったところをみると、溝を掘っていなかったらおそらく床下まで水が到達していただろう。
テント設営における事前準備の大切さを実感しつつ、2日目がスタートした。




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【AM7:00】
本日の行程もそれほどタイトではない、湿ったテントをのんびり撤収しながら、少し遅めの出発だ。(撮影地点1にて撮影)

入山時の天気予報では今日の天候は概ね曇り。
山間部では雨マークがついていたが、降水量はさほどではなく、にわか雨か小雨程度だろうと予想された。
そして僕らが鷲羽に登頂する予定の3日目以降は天候が回復。軒並み晴れマークという絶好のコンディション…


に、なるはずだった。


だが、薬師峠キャンプ場から太郎平小屋までの道すがら、たまたま一緒に歩いていたおじさんから驚愕の事実が明かされることになる。

「今前線が停滞してるから、数日は天候回復しないよ」



















( ゚д゚)




この時それはもう、僕は鳩が豆鉄砲食らったようなアホ面を披露していたに違いない。
いや、実際、まさしくこんな気分だった。
そもそも台風は13日の段階で北へ抜けたはず…ならば、台風一過で晴れるのではないか!?
確かに台風一過という言葉があるとおり、台風が過ぎ去った後は快晴になる事が多い。
しかしあくまでも多いという確率論であって、その後の大気の状態や気圧配置によっては、必ずしも晴れないこともある。

このおじさんは立山方面から縦走してきており、本来ならこれから雲ノ平を抜け新穂高まで縦走する予定だったそうだが、天候が天候なのでもうここで切り上げて折立へ下山するとのことだった。
山経験が豊富そうな方で、気圧配置もラジオで確認したと言っていたから、おそらく自分で天気図をつけたのだろう、信憑性は高い。
今回最大の目的である鷲羽は3日目、今日1日で天候が回復する望みは薄い。
僕はこの時自分の立てた計画が音を立てて崩れていくのがわかった。
しかし、だからといって今更退く事はできない。


そして何より、比喩でもなんでもなく、僕の膝が歩けと言っているのだ。


今まで痛みの呪縛に囚われて、満足に歩く事もままならかかった僕の膝が、 「こんなに元気なんだぜ、歩かないでどうするよ!?」 と、無言で訴えかけているようだった。
危険ならば撤退も考えた、しかし幸いにしてそこまで荒天というわけでもなさそうだった。ここで退いてはきっと後悔する。
大変な山行になる予感はこの時既にあったが、それでも僕らは歩く事を決めたのだった。



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太郎平小屋から少し歩くと、薬師沢と黒部五郎方面への分岐がある。(撮影地点1にて撮影)
ここからは未知の領域だ。
ここから薬師沢に下り、やがて4日後には黒部五郎岳方面から再びここに戻ってくる…。
進んだが最後、そう簡単には戻ってはこれない長い道のりの、いわばここがスタート地点である。
引き返すなら今だが、そんなことは微塵も考えるはずもなかったww



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【AM8:20】
一度目の渡渉地点到着。(撮影地点2にて撮影)
重い荷物を背負っての急傾斜の下り、しかも足元はぬかるんでいて安定も悪く歩きづらい。
少々時間を要しているが、本日の行程はそれほど長くない。多少ゆっくりでも大局には影響はないだろう。
左俣出会までは一気に歩いてしまいたかったが、無理をしても仕方ないので一旦休憩をとることに。

この時点では雨はほとんど降っておらず軽い小雨程度。
ガスで展望は全くないが、視界を遮られるほど濃いほどでもなかった。
本来ならば水晶、雲ノ平を仰ぎ見ながらの下りのはずだが、眼前真っ白なのは残念だった。


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太郎平から一気に下り、薬師沢小屋へ至るまでの道は整備された木道が多い。(撮影地点3にて撮影)
歩きやすいかといえばそうとばかりも言えず、晴れて乾いていればすこぶる歩きやすいのだろうが、今回のように濡れていると、多少の傾斜がついているだけでいとも簡単に足を滑らせてしまうほど滑りやすいのがここの木道の欠点だ。
テーピングで膝の動きを制限されているとはいえ、僕はここで2度に渡って尻餅をつく羽目になった。
濡れている時は十分に注意した方がいい。



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【AM10:05】
薬師沢小屋到着。(撮影地点4にて撮影)
霧雨のように細かかった雨も、少しずつ雨粒の形を成してきた。
初日にここ薬師沢小屋まで足を伸ばしてしまえば総行程3泊4日にする事も可能だったのだが、せっかくテントを担いでいくのだから可能な限りテント泊にしたかったので、テン場のないここ薬師沢小屋は候補から消えた。
山小屋泊前提ならばここ薬師沢小屋を足がかりにしたほうが、より行程にも余裕ができるのは間違いない。
宿泊の予約は太郎平小屋で受け付けているので、この山域に入る方は宿泊を検討してみてもいいだろう。


既にお気づきの方もいると思うが、この時点で僕らはレインウェアの上着は羽織っているものの、下は履いていない。
ここに至るまでの雨がほとんど霧雨か小雨だったため、雨で濡れるよりも汗で蒸れる方が結果的には濡れるとの判断で、あえてレインウェアの下を履かずに来たのである。
実際その判断は間違いではなく、僕らのショートパンツはある程度の撥水性があるのでここに至るまでにはほとんど濡れずに来ていた。
サポートタイツは多少濡れはしたものの、時折来る雨間の間に体温で乾いてしまう程度の濡れだったので支障はなかった。
小屋に到着した際、少し雨粒が大きくなったのが気にはなったが、さほど天候は荒れないだろうと判断し、このままレインウェアの下を履かずに歩く事を決めた。


結果として、その判断は大きな誤りだったと後に思い知らされる。


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薬師沢小屋から吊り橋を渡ると、今までの登山道とは一転、突如長い梯子が出現する!(撮影地点4にて撮影)
高いところが苦手な嫁が、最も不得手とするのが梯子である。
通常の登山道の速度を1とするならば、岩場は2、梯子は3もの時間を必要とする、嫁にとっては鬼門中の鬼門なのだ。
そんなわけで僕が先行し、手足の置く場所を逐一指示しながらの歩行のため、写真はナシ。

しかし今回のように梯子が濡れており、しかも荷物が重いというのは予想以上に嫁には負担だったかもしれない。


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こちらの梯子はまだいい方。(撮影地点5にて撮影)
先程の吊り橋を渡ってすぐの梯子は下が川と岩で、落ちたらボチャンである。


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そして何よりこの薬師沢小屋から雲ノ平への登りはとんでもない急登である。

冒頭の断面図、そして梯子の存在を見てもわかるとおり、並の急登ではない。
それこそ先日行った北アルプス3大急登のうちのひとつ、燕岳の合戦尾根など、ここの傾斜に比べればただの緩やかな坂だ。
何を持って3大急登としているのかはわからないが、よっぽどここの急登の方が性質が悪い。
そして悪い事は重なるもので、ここにきて突然それはやってきた。


凄まじい豪雨が降ってきたのだ。


ゲリラ豪雨と比較しても遜色ないくらいの激しい豪雨。
もちろん一瞬にして僕らのショートパンツはずぶ濡れになってしまった!
しかし豪雨の被害はそれだけにとどまらなかった…。




視界が妨げられるほどの豪雨の中、しばらく登っていくと…僕は間違えて沢へ足を踏み入れてしまった。
しまった、どこで道を間違えた!?
焦りながらキョロキョロしていると、上から沢の中をザブザブと登山者が歩いてくるではないか…

『????』

よくよく足元を見ると、岩にマーキングがしてある。
そう、降り続く豪雨のせいで、登山道が雨水で溢れ濁流となり、それはさながら沢の様相を呈していたのだ。
そしてここの急登と相まって、沢と言うには生易しい、むしろ滝のように濁流が登山道を流れ落ちてきていたのである。
それは大げさでも何でもなく、自分が間違って沢に迷い込んでしまったと勘違いするほどの状況だった。

おそらく、本来ならば水など一滴も流れていない登山道のはずである。
しかしこの日降った豪雨が、ただの登山道を一変、濁流流れる滝へと変貌させてしまったのである。
現に、後日縦走中に何人かの方からこの日の登山道の状況を聞く機会があったのだが、薬師岳、黒部五郎岳への登山道もここと同様に沢と化していたとのことだった。
それほどに酷い雨だったのだろう。逃げ場のなくなった雨水が、より流れ易い登山道に流れ着くのは自明の理と言えよう。



さて、そんな豪雨の中、無謀にもレインウェアの下を履かずに歩いていた僕らは惨憺たる有様だった。
沢となった登山道の中、水を避ける様に石へ石へと乗り移って歩を進めるものの、1時間も登る頃には足を置く石さえまばらになり、結果として靴に散々水を浴びる結果となった。
防水性が売りのゴアテックスの登山靴とはいえ、常時沢の中を歩くようには設計されてはいない。
さらに悪い事に、レインウェアの下を履いていなかったため、濡れたショートパンツ、サポートタイツを伝い、どんどん靴の中に水が浸水してくるという悲惨な状況をも引き起こしていた。
結果として、靴の中はずぶ濡れ。
かつて小学生の頃、ゴム長靴の中に水を入れてズッポズッポ音を立てながら歩いた体験をリアルに思い出す羽目になった。
当時はそれが楽しかったのだろうが、コレの一体何が楽しかったんだ?馬鹿じゃねぇの?と過去の自分に意味もなく腹を立てるほど酷い精神状態での登りだったw

濡れて重くなったザックが肩に食い込み、レインウェアの中は汗でビショビショ。ズボンはずぶ濡れ、靴は金魚鉢。



『あぁぁぁぁ!もぉぉぉぉ!!何なんだよコレ!!』



そう叫びたくなる心をぐっと押し殺……すこともせずに、叫びながら登る事2時間強。
登れど登れど先が見えず、視界が開けたかと思えばまた斜面、何度も何度も繰り返し。
天候がよければここまでヒドイ登りじゃなかったはず…
しかし悪天候に判断ミスが相まって、今回の縦走で…いや、僕の山岳経験史上最も最悪の登りとして記憶される事になった。



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【PM1:00】
ようやく斜面が終わり、なだらかな樹林帯へ。(撮影地点6にて撮影)
そして樹林帯からしばらく歩くと、そこには雲ノ平の幻想的な風景が……待っていてはくれなかった。
まぁ期待はしていない…けど、あの急登を頑張って登ったご褒美がコレというのは…。
本来ならばここから、薬師岳、黒部五郎、水晶岳などなど…素晴らしい景色が拝めるはずなのだが。
悲しきかな、コレが現実である。


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しかしあれだけしんどい2時間半だったのだが、終わってみれば笑ってるうちの嫁。
いやはや…この1年でえらく強くなったもんだ…。

僕も僕で、景色は散々だったわけだが、しかしあの急登で膝痛を発症しなかった事が嬉しい反面信じられないでいた。
そして何より、健康で歩けると言う事がどれだけ幸せなことかという事を、これでもかと実感していた。
そう、痛くて歩けず悔し涙を飲むくらいならば、辛くても歩ける方がよほど幸せなのだ。
たとえそれが雨だろうと…びしょ濡れだろうと……金魚鉢だろうと…ww


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【PM2:15】
雲ノ平山荘到着。(撮影地点7にて撮影)

そんなわけで、金魚鉢と化した気持ち悪い靴でズポズポ歩きながら、ようやく雲ノ平山荘へ到着。
とりあえず到着と同時に靴の中の水を出し、靴下を絞る。よくぞまぁこんなに濡れたもんだというほど水が出るわ出るわ…

山荘の中はストーブが炊かれとても暖かかった。
そして何より非常に綺麗!
それもそのはずこの山荘、建て替え工事が終わりつい2,3日前に営業再開したばかりのピッカピカの新築である。
とにかく冷えた体を温めようと、ラーメンとカレーとうどんを注文。のんびり食事を摂っているうちに、ふとある感情が芽生え始めてきた…。


『ここ泊まったら快適だろうなぁ…』


中は暖かいし、雨の心配は全くないし、そして何より乾燥室が使える!
濡れた装備を乾かす事ができる、特に靴!これは今日一日散々雨に打たれた僕らからすれば非常に魅力的な提案だった。
宿泊に傾きかけて、空室状況も聞いたりしたのだが…。




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結果として僕らはここに居たww(撮影地点8にて撮影)

あぁそうさ。ドMと言われても何も言うまい。
だが僕はテント泊をすると決めたのだ、ポールがへし折れるかテントが吹き飛ばされない限りはテントに泊まるのである!


そんなわけで、予定通り雲ノ平キャンプ場にてテントを設営。
カメラもカメラバッグもずぶ濡れだったので、このあたりから全く写真はないのだが、この日僕は何を血迷ったかテントだけでなくタープを張りだしたのである。
雨も降りそうだったし、調理スペースを確保するためのタープ設営だったのだが…先程寄った雲ノ平山荘での食事で思いの他満腹だったため、この日は結局軽食で済ませてしまい、タープは全く意味を成さなかった。
意味を成さないどころか、むしろこの日に限っては不安要素として僕を悩ませる結果になった。

と、言うのもこの日の夜、この縦走で最上級の暴風雨に見舞われたからだ。

そろそろ寝ようかと床に入った夜の7時。
凄まじい風と共にタープがバタバタと煽られる音で飛び起きた僕は、タープの状態を確認するために外に出た。
さすがにこの風の中今更撤収するのも難儀なので、とりあえずペグを全て増し打ちし、これで一安心とテントに戻ろうとした。
しかしそのときふと周りを見渡すととんでもない事が起きていたのである。
テントの上の斜面から水が流れ落ち、僕のテントにまで到達していたのだ!
しかも近くを流れる川の流域面積が、最初見たときの3倍近くにも達しており、僕のテントの近くにまで迫ってきていたのだ!


これはヤバイ!
しかし沢の方は僕の力ではどうしようもないし、今更テント設営しなおすわけにもいかなかったので運を天に任せた。
設営する際テント脇には水が流れた形跡もなかったから、沢の幅はテントまでは達しないだろう。
対して、テントに流れ込んだ水の方は即座にテントの周囲に水路を増し掘りし、沢の方に水が流れるように流れを誘導した。
しかしここのテント場の地質が石を含む地質のため、うまいこと深く水路が掘れない。
現状なんとか水は全て沢に流れるようにはなったが、一晩中水が流れ込めばいずれ水路は徐々に埋め立てられ、最終的には再びテント側に水が流れてくるようになってしまうだろう。

ならばと、水が流れてきた更に上流まで行き、根本から流れを変えることにした。
岩をどかし、細かい石をどかし、沢の方へ水が流れるように誘導。
反対に僕のテントのほうには石や砂を積み、少しでも流れがこないように小細工。
1時間にも渡る夜間の治水工事により、僕のテントはなんとか水没を間逃れた。


とはいえ、朝方まで暴風が止む事はなく、一晩中テントやタープをバタバタと鳴らし続け、僕らを不安にさせた。
結果的にタープは吹き飛ぶ事もなく、意外に強い耐風性を見せ付け、僕のその場しのぎの治水工事は功を奏し、テントにまで水が達する事はなかったのである。
こうして雨に始まり雨に終わった激動の一日が幕を閉じた。
縦走計画の際、多少の雨は想定していたが、ここまでひどい雨は全くの想定外だっただけに、ある意味ではいい経験になった。
いい経験にはなったが、やはり山を歩くのは晴れた日に限ると再確認するに十分な経験でもあった。

当初の天気予報から大きく外れ始めた悪天候の中、果たして僕らは無事予定通り縦走を継続する事ができたのだろうか??



北アルプス縦走4泊5日 3日目へ続く


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by misawa_re7 | 2010-09-06 17:31 | 山行記録 2010


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