【山行記録】 大絶景 南アルプス好展望の山 奥茶臼山
2010年4月18日。かねてからの予定通り奥茶臼山へ行ってきた。
前回僕が単独で登ってから5ヶ月…気持ちを改めて夫婦登山のやり直しである。
天候は早朝から雲ひとつない快晴、僕らの行く手を遮るものなど何も無いと思っていたのだが…
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奥茶臼山 (おくちゃうすやま) 【標高2473m】

奥茶臼山は、南アルプスの長野県側に位置する前衛峰である。
南アルプスと伊那山脈の中間に挟まれ、麓の飯田市からは赤石岳、荒川岳といった南アルプスの主峰を遮る形で位置している。
300名山の1峰であり、その立地上南アルプスの展望が素晴らしい山だが、山頂までには片道13kmもの林道歩きを要したため、林道歩きを嫌う登山者からは敬遠される傾向にあった。
しかし2006年、飯田市がしらびそ峠から尾高山への登山道を延長し、奥茶臼山まで至るルートを整備したため、その距離は短縮され、かつ登山道によるアクセスが可能になった。
だが、短縮されたとはいえ片道8kmの登山道は決して楽とは言えず、未だ安易に立ち入る事を許さない山として静かに君臨している。


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2010年4月18日 天候:晴れ
しらびそ峠ルート往復(しらびそ峠~尾高山~奥尾高山~岩本山~東斜面伐採地~奥茶臼山~西斜面伐採地)

・ 高低差、距離、コース概要は上記の通り。
・ 地図上の通し番号は、これからブログに添付する画像の撮影したポイント。




以前、僕が単独で登ったのは前回のブログで触れたとおり。
その時嫁と一緒に登頂できなかったことがずっと引っかかっていた僕は、いつか機会があれば嫁と奥茶臼に登ろうと考えていた。
それも南アルプスが雪を被っているうちに登る事が出来たらさぞステキだろうと。そしてついにその機会が訪れたのである。

4月15日にしらびそ峠への林道の冬期通行止めが解除され、林道が開通した。
残雪の南アルプスを望むならば一日でも早いほうがいい。奥茶臼行きは林道の開通した週の日曜日と決めた。

往復約16km、累積標高差は約2300m

日帰り登山としては少々タフな部類に入る奥茶臼山だが、前回僕が単独で訪れた時にはコースタイムを2時間も短縮していた。
それ故に過信もあったし、少々見くびっていた感は否めない。
果たしてそんな僕らに、奥茶臼山は微笑んでくれたのだろうか??




【AM2:30】
起床。
起きてすぐ天気予報を確認するのは毎回の癖だが、前日からの晴れの予報も変化なく安心する。
今回はスピード重視の山行になるため、荷物はギリギリまで絞った。
軽量化のために、昼食、調理器具は持たず、行動食だけで済ます予定。
前日まさかの積雪があったため、奥茶臼付近はかなり積雪していると予想され、スノーシューを持っていこうか最後まで迷う。
しかし北八ヶ岳縦走の際、ザックにくくりつけたスノーシューの重さに辟易した苦い記憶が新しく、結局スノーシューを持たずに行く事にする。
しかし念のためアイゼンとピッケルを持っていくことにしたため、結局重量はいつもとさほど変化なかった。




【AM3:30】
出発予定も、出発してすぐにICレコーダーを自宅に置き忘れたことに気付き、戻る羽目になる。
結局ちゃんと出発したのはAM3:45だった。




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【AM4:50】
しらびそ峠到着。(撮影地点1にて撮影)
出発前にハイランドしらびそに寄り、トイレを借りようと思ったのだが、肝心のトイレはシャッターが閉まっており利用不能。
仕方がないのでトイレは諦める事にした。

夜半から朝方にかけて晴れていた事もあり、気温は低め。
南アルプス側斜面から冷たい風が立ち上ってきているため、しらびそ峠付近は非常に寒い。
日が昇るまでは体温を下げないように、先日買ったばかりのクラウドエボ フーディーJKTを着て出発する事にした。


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【AM5:20】
しらびそ峠出発。(撮影地点1にて撮影)
本来この時期ならば尾高山か奥尾高山くらいまでは積雪がないはずなのだが、登山道上り口からいきなりの積雪である。
昨日麓で積雪があった時に予想はしていたが、思いの他積雪量は多い。
しかし雪が腐り始める前ならば適度にクラストしていて歩きやすいはずと予想し、出発時間を1時間近く早めたのが幸いした。
雪がクラストしている間にどこまで距離を伸ばせるかが一日の疲労に大きく関わるはずだ。


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【AM5:50】
前尾高山直下、展望地にて休憩。(撮影地点2にて撮影)
日が昇り暖かくなってきたが、東斜面から吹き上げる風は冷たい。
この展望地からの南アルプスは荒川岳、大沢岳、聖岳、光岳を展望する事が出来る。
赤石岳は大沢岳の陰に隠れてしまいあまり見えない。ちなみに写真は光岳方面。右奥にはハイランドしらびそが見える。


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前尾高山通過。(撮影地点3にて撮影)
嫁の真横の看板に、前尾高山と記されているのだが、実はこの時点ではここが前尾高山だとは気付かずスルーしていた。


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前尾高山の下り。(撮影地点3直下にて撮影)
奥茶臼山へはこのようなアップダウンを何度も繰り返しながら行く。
地図に載っていない隠れたピークを合わせれば実に20近いアップダウンをこなさなければならない。
登り一辺倒な山と違い、上り下りを繰り返す山はリズムを崩しやすいため、額面以上に疲労しやすい。注意が必要だ。


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【AM7:05】
尾高山山頂到着。(撮影地点4にて撮影)
この辺りから主に北側斜面を中心に根雪が凍結し、滑りやすくなっているためアイゼンを装着するかどうか迷う。
しかしとりあえず凍結の割合もそう多くないため、アイゼン装着は見送った。
尾高山山頂はご覧の通り狭いが、少し進んだところに開けたところがあるので、そこで休憩する。

前回はここまで1時間で来たが、さすがに今回はそう簡単にはいかなかったようだ…。
コースタイム的には全然悪くないペースだが、しかし前回を基準にしている僕としてはその微々たる遅れに対して微妙に焦りを感じていた。
結果的にそれが徐々に歩を早める結果になる。


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尾高山過ぎた先の展望地からの奥茶臼山。(撮影地点4付近にて撮影)
まだまだ距離がある。

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同地点から荒川岳と赤石岳の展望が得られる。
天気は相変わらず快晴、素晴らしい展望だ。


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尾高山を過ぎれば再び降下である(撮影地点4直下にて撮影)
アップダウンの繰り返しに加え、根雪の凍結による足場の不安定さという要素まで加わり、足には負担が蓄積されていく。


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クラストしていた雪も徐々に緩んで腐り始めてきた。(撮影地点5付近にて撮影)
雪への足の沈み込みが徐々に増えてくる。


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【AM8:10】
奥尾高山到着。(撮影地点6にて撮影)
コースタイム35分のところを倍近くかかってしまった。
徐々に積雪量も増え、かつ雪の状態が悪くなってきている事にも起因しているだろうが、それにしてもあまりペースはよくない。
それがまた不要な焦りを生み、無理をするという悪循環に陥っていた。
そしてこの時点で恐れていた事態が表面化することになる。


北八ヶ岳縦走の時に発症した右股関節痛の再来である。


ただ、この時点ではまだ違和感の域を出ず、痛みというほどの症状は出ていない。
股関節を重点的にストレッチしつつ、前進する事にした。


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【AM8:34】
根雪の凍結が酷く、斜面を登る際かなり難儀になってきたのでアイゼンを装着。

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今回が初のアイゼン歩行になる。
装着に関しては購入時に嫌というほどシミュレーションしたので装着は至ってスムーズだ。
フィッティングも完璧で、全くズレる気配もない。


早速歩いてみるが、アイゼンとは実に素晴らしい…。
スノーシューにも爪のようなものがついているが、アイゼンのそれとは比較にならないという事がよくわかった。
凍結した雪面だろうが斜面だろうが、爪が利くこと利くこと。最初から装着していればよかった。
重量はスノーシューと大差ないはずだが、スノーシューほど大きくないので、装着していてもそれほど足に負担はかからない。
とはいえやはり重量物が足についているという事実は変わらないので、無理は禁物。
必要な時には装備し、必要がなくなれば外すようにして、足への負担は減らさなければならない。


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【AM9:40】
岩本山到着。(撮影地点7にて撮影)
だいぶ積雪が深い。50cmほど積もっているだろうか?
とはいえほとんどが根雪で、新雪は表面の5~10cm程度である。
あと1時間ほどで奥茶臼山へ到着できる予定だが、南アルプス側の空に薄雲がかかってきた。
天候が持つか心配になってきた、時間への焦りに拍車がかかる。


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岩本山を過ぎた辺りから開けた場所が多くなってくる。(撮影地点8付近にて撮影)

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晴天時は問題ないが、悪天でガスに巻かれると現在地がわからなくなり非常に危険な場所でもある。
それを危惧してか、このようにテープによる登山道のマーキングが非常に多い区間でもある。
景観的にも、自然的観点から言ってもあまり良いとは言えないが、しかし僕らのような初級登山者にはありがたい代物だ。
しかし道迷いのテープが残地されているケースもあるため、過信は禁物だ。

ここから最後の急登を経て、奥茶臼山東側斜面の伐採地 (展望地) へ到達する。




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【AM11:10】
奥茶臼山東側斜面伐採地到着。(撮影地点9にて撮影)
こうやってパノラマ写真にしてしまうと陳腐な感じがするが、実際に見ると凄まじい展望である。
嫁も「凄い!」以外の言葉が出てこない。それほどまでに絶景である。

左から仙丈ヶ岳、甲斐駒ヶ岳。北岳、間ノ岳、農鳥岳の白鳳三山。塩見岳、荒川岳ときて主峰赤石岳。そして聖岳に光岳。

南アルプス全山の大絶景である。


ここに来るまでに6時間。雪の中、長い道のりを歩いてきた苦労が報われる瞬間だ。


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こちらから綺麗に見えるのは主峰赤石岳だろう。
ともかく近い!デカイ!美しいのである!


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聖岳方面はこちら側の斜面からしか見る事ができない。
西側斜面に回ってしまうと、奥茶臼山が邪魔になって見えなくなってしまうからだ。


しばらくここで大絶景に呆けていた。
しかしここまでに6時間という膨大な時間を消費してしまった以上、そうゆっくりはしていられない。
名残惜しいが、また帰りにここには寄れるのだから、足早に山頂、そして西側斜面へ行く事にした。


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【時間計測忘れ】
奥茶臼山山頂到着。
ここからの展望はほとんどない。


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西側斜面に降りる事で、中央アルプス、北アルプスへの展望が開ける。
本来なら北アルプスまで展望が利くのだが、この日は少しモヤっていてそこまでははっきり見る事ができなかった。

ちなみに手前に見えている白い広場が西側斜面の伐採地だ。
雪がなければ伐採された倒木や、残置ワイヤーやチェーンソーのチェーンなど、景観を損ねるブツのオンパレードなのだが、幸いにして雪が全てを覆い隠している。


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中央アルプスの展望。
右手前の山は前茶臼山である。
ちょっとわかりづらいが、左の奥のほうにぽつんと頭を出している山は木曽御嶽山だ。モヤっているのでやや赤く写っている。


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仙丈ヶ岳に甲斐駒ヶ岳。


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北岳、間ノ岳、農鳥岳の白鳳三山。


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塩見岳。


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荒川岳はこちら側の斜面からのほうが遮蔽物が少ない。


撮影するにあたっては、空は決していい状態とは言えなかった。
しかしこれだけ南アルプスを堪能できれば十分というか出来すぎなくらいである。
西側の斜面で腰をすえ、パンを食べながら時間を忘れて絶景を堪能した。


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しかし現実は残酷だ。
ここまで7時間近くかかって上った行程を、これから下らなければならない。
ざっと見積もっても5時間以上はかかるだろう。まだまだ長丁場だ。
気持ちと共に、アイゼンのバンドを引き締め、まず手始めに先程下ってきた急斜面を登り始めた。


なんと、ここで東京から来たという男性とすれ違った。
今日は絶対に誰とも出会わないだろうと予想していた僕らからすれば驚きである。
それはどうやら先方も同じだったようで、僕らのトレースがなければ途中で挫折していたかもしれないと仰ってくれた。
僕らのトレースなど、時折脱線しながらのへっぽこだったはずだが、そんなトレースでも少しは役に立ったのなら嬉しい。
この男性はこれから西斜面へ降りるとのこと、ここで挨拶をして僕らは下りの岐路につくことにした。


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さぁ、ここからが正念場だった。

前半の上りの間ずっとラッセルし、トレースを付けてきた僕の足は徐々に痛みを増し始めていた。
さすがにこのままではまずい。
ここでトップを嫁に譲り、僕は嫁のトレースを歩く事にした。

しかし時既に遅し。

もはや違和感は痛みへと姿を変え、もはやいつ爆発してもおかしくない状況にまで発展していた…。




【PM1:36】
岩本山到着。
痛い。歩けないほどではないが痛い。とにかく足を上げようと、股関節を曲げると痛いのだ。
だから逆に足を曲げずにすむ下りはそれほど痛みがない。
幸いにして残りは下りだ。しかしこの登山道はアップダウンがミックスされており、必ずしも下りのみではないのが悩みどころだった…。




【PM2:50】
奥尾高山到着。
ペースは悪くない。しかし雪が完全に腐って足が滑る。
そのたび激痛が走る。




そして運命の尾高山へ到着。ここで僕の足は完全に沈黙した。

いや、沈黙したという表現は正しくない。


痛みが激痛へと変貌したのである。


もう普通に足を上げる事すらままならない。
少しでも動かそうものなら悲鳴を上げたくなるほどの痛みが襲ってくる。
尾高山から登山口まではコースタイムで約1時間半。


地獄の1時間半の始まりだった。




途中で、奥茶臼で会った男性に追いつかれた。
当然といえば当然である。尾高山手前辺りから僕はまともなスピードで歩いていないのだから。
尾高山で一言二言会話を交わし、再び僕らが先行する。しかし不思議と最後の最後まで僕らは追い抜かれる事はなかった。
明らかに僕らのペースは目に見えて遅かったはずで、抜こうと思えばいつでも抜けたはずなのだ。

おそらくこの方、僕の足を心配してくれて、何かあったときのために後ろからゆっくり着いてきてくれたのではないだろうか?
僕が行動不能になった場合、この山域にいるのは僕のほかに嫁とその男性のみである。
嫁もこの段階でかなりキており、僕が倒れたら到底どうにかできる状況ではなかった。
真偽の程はご本人に確認したわけではないのでわからない。
しかし事実はどうあれ、ただ後ろを歩いてくれているだけで大変心強かったのも事実なのだ。

この場を借りてお礼を言いたいと思う。ありがとうございました(*´∀`*)




【PM5:24】
なんとか無事下山する事が出来た。この時点で僕も嫁も満身創痍であった…。

振り返ってみるととんでもなく長い一日だったように思う。
よくよく考えると、今回のコースと行程だが…

過去最長の16kmという距離を、過去最高の12時間という時間をかけ、全面積雪で歩行したのだ。多少どこかおかしくなっても無理はない。

正直僕は前回無雪期に来た時に、コースタイムより2時間短い時間で登っていたことでこの山を舐めていた。
事実無雪期ならばこうまで行動時間もかからなかったろうし、ここまで痛めつけられることもなかったろう。
しかし積雪に対する認識が甘かったのは否めない。
もっと出発時間を早くするなり時間的余裕を持ち、全体的にペース配分にゆとりを持つべきだった。
そうすれば僕の足の状態も少しはマシだったに違いない。

この冬、スノーシューや冬期縦走で足腰はだいぶ鍛えられてはいると思う。
しかし雪上歩行を経験したことで、逆にいらない自信や過信を持つようになってしまったのは否定できない事実だ。
僕らは山を始めたばかりの初心者なのだから、山に対し、自分たちに対し、もっと謙虚であるべきだと思うに至ったのである。




とまぁ…堅苦しい話はこのくらいにして。

大変苦しい山行だったが、得たものもそれに比例して大きかったと思う。
嫁など、 「もう二度と来ない」 と言うかと思ったが、予想に反して 「また来たい」 と言っているくらいである。
僕も是非また無雪期にこの山を訪れたいと思っている。
無雪期ならば今回よりも随分楽だろうし、そもそも次ここに来る時は今日ほど無理はすまい。

奥茶臼山。大変な山だったが、僕らの夫婦登山のやり直しとしては上々だったのではなかろうか(*´∀`*)


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by misawa_re7 | 2010-04-20 01:35 | 山行記録 2010


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