【考 察】 日本百名山の功罪について考える
『日本百名山』

深田久弥氏の随筆であり、実際に読んだことはなくとも山を登る人間ならば誰しもが一度は耳にしたことがある言葉だろう。
そのような有名な著書に対し、僕のような下っ端登山者が公の場で意見するのは正直憚られるのだが…
しかし敢えて今回、日本百名山の功罪について考えてみたいと思う。
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『日本百名山 深田久弥著』


今や国内の山岳著書の中で、最も有名と言っても過言ではないこの随筆集が出版されてから約50年が経とうとしている。
『日本百名山』 は深田久弥氏が自ら登った日本国内の山の中から、独自の選定基準に基づき厳選した100の頂であることは山に関わる者ならば大抵の人が知るところだろう。
実際に読んだことはなくとも、山に登っていれば嫌でも百名山の名を耳にするだろうし、100の頂を全て言える登山者も少なくはないはずだ。
それほどまでに、百名山と深田久弥の名はこの50年で全国の登山者の間で深く浸透していったのである。

当初は深田氏の 『好きな山100選』 程度の扱いであったであろう100の頂が、今や山を登る者の間ではひとつのブランドとなり、また『百名山スタンプラリー』の対象となっている現状を、氏は予想できただろうか?
氏の意思に沿っていたかどうかは定かではないが、日本百名山は一つのブームとなり、幅広い年齢層の登山者を山に駆り立てる1つの要因ともなっている。
そういった現状を憂う声も決して少なくはなく、山を登る者ならば誰しもが 『百名山』 に対して何らかの思いがあるに違いない。



このブログは百名山の功罪などという仰々しいタイトルをつけているが故に、いらぬ誤解を招きかねないので最初に断わっておきたいのだが、僕は今回


『百名山』 の是非を論ずるつもりは一切ない。



確かに 『日本百名山』 という一つのブームが、山岳界に与えた影響は計り知れない。
しかし、果たしてそれが功であるか罪であるかは人それぞれ立場によって自ずと異なるだろう。
例えば、登山道や山小屋の整備が進めば必然的に人が集まるし、安全性も向上する。反面、環境へのダメージはより深刻となるだろう。
また、ロープウェイや道路の開通などによりアクセスが良くなることを好ましく思う人もいれば、開発により山深さが失われる事を嫌う人もいる。

百名山がきっかけで、幅広い年齢層が山に足を運ぶ事により遭難事故の発生数が飛躍的に増えているという現状も確かにある。
しかしそれにしても百名山自体に罪はない。
例え全くの初心者が日本百名山に感銘を受けて、誤って厳冬期の富士山に登って遭難してしまったとしても、それは百名山の罪とは言えまい。
己の想いを書き綴っただけの随筆集に、そこまでの説明責任を問うのは酷というものだ。
遭難事故をあえて罪とするならば、問われるべきは己の危機管理能力の低さであろう。
それに、これらは皆百名山に限った話ではなく、ある程度人気のある山ならば百名山でなくとも起こり得る問題である。

しかし、中には百名山であるがゆえに起こる問題というものが存在するのだ。






それを最も体現している山が浅間山である。





先日僕らは紅葉の浅間山に行ってきたのだが、その美しい山とは対照的に、大変嫌な思いをすることとなった。

浅間山は現在も活動を続けているランクAの活火山であり、故に火山活動の状態に応じて立ち入り禁止区域が変動するようになっている。
2013年11月現在、浅間山は 『警戒レベル1(平常)』 であり、前衛山の前掛山までの入山が可能となっている。
ちなみに小諸市のHPに記載されている、浅間山の登山規制のお知らせを抜粋する。



平成22年4月17日(土)から、火口から500m(前掛山)まで登山者の自己責任で登山できます。

1.登山できるコース
  A 黒斑コース
   1.高峰高原・車坂峠⇒ 槍ヶ鞘⇒ トーミの頭⇒ 黒斑山⇒ 蛇骨岳
    ⇒ 仙人岳⇒ Jバンド⇒ 賽の河原分岐点⇒ 前掛山までの登山道
   2.高峰高原・車坂峠⇒ 槍ヶ鞘⇒ トーミの頭⇒ 草すべり⇒ 湯の平口
    ⇒ 賽の河原分岐点⇒ 前掛山までの登山道
  B 火山館コース
    浅間山荘登山口⇒ 一の鳥居⇒ 二の鳥居⇒ 火山館⇒ 湯の平口
    ⇒ 賽の河原分岐点⇒ 前掛山までの登山道

2.自己責任について
 浅間山は活火山のため、火口より4km以内は立入禁止区域になっておりますが、登山ルートに限り立入りを認めています。規制緩和区域内でも火山災害等の危険があることをご承知いただき登山するか、断念するかを自ら判断することが「自己責任」 です。





この文章を読んでわかるとおり、実は浅間山は正式な山頂までの入山を認めていない。

しかも、登山ルート以外は災害対策基本法第63条により定められた警戒区域である。

災害対策基本法第63条で定められる警戒区域とは、基本的に許可なく区域内に留まる事を認めず、強制退去を命じられ、場合によっては懲役、罰金が課せられることもある。
れっきとした国が法で定めた立ち入り禁止区域なのである。
そんじょそこらの山に申し訳程度に立っている立ち入り禁止の看板とは全く持ってレベルが違うのだ。

察しの良い方はもうお分かりだろう。そもそも冒頭に浅間山の写真を使った時点で理解した方もいるかもしれない。

要するに、今現在において浅間山の正式な山頂を踏むためには法を犯さなければならない。




言い換えよう。





今現在において浅間山の正式な山頂を踏んだ者は犯罪者である。




しかし、浅間山においてはこの立ち入り禁止区域があまりに軽視されている現状がある。
驚くべきことに、ネットで浅間山 山頂で検索をかけると、恥ずかしげもなく山頂まで登頂した山行記録がゴロゴロ出てくる。
挙句ヤマレコにすら登頂記録がいくつも存在しているというとんでもない現状である。
こう言っては何だが、ツイッターで悪戯や犯罪自慢をしている連中と何が違うというのか?

で、山頂へ不法侵入した輩が概ね口をそろえて呪文のように唱えているのが 『自己責任』 という言葉である。
自己責任で山頂へ行った。何が起きても自己責任だから問題ないとでも言うつもりなのだろうか?
もし万が一火山性ガスにまかれて死亡したとして、いったい誰が遺体を回収するのだ。自己責任と言うからには自分が死んだとき遺体を回収する人間を手配していなければ嘘だろう。
では自分の死後それが大問題になり、結果浅間山自体の入山が完全に禁止されたとしたら、国内の数多の登山者たちに一体どう責任をとるつもりなのだろう。
仮に生きながらえたとしても、遭難した事自体が問題になれば、登山の全面禁止措置の可能性は十分にあり得る。
たった一人の軽はずみな行動が山岳界全体に影響を及ぼす可能性について考えが至らないのだろうか?
一度 『自己責任』 の呪文を唱えている連中に聞いてみたいものだ。

何度も繰り返すが、自己責任で入山して構わないのは前掛山までである。
そもそも法で定められた立ち入り禁止区域だとしても自己責任で入って構わないというのなら、殺人も放火も窃盗も不法侵入も自己責任でやって構わないと言っているのと同義である。
罪の大小差はあれど、法治国家においてそんな理屈がまかり通る筈があるまい。



何故そこまでして山頂に拘らなければならないのだろうか?
無論浅間山の立ち入り禁止を軽視している(あるいは違法であることを知らない)という事も要因の一つとして考えられるだろう。

しかし、最大の理由は 『百名山の正式な頂だから』 ではないだろうか?

今現在立ち入ることができるのは前掛山までである。
例え前掛山の頂に 『浅間山』 の道標を立ててみたところで、正式な山頂は釜山以外にあり得ない。
そう考える 『百名山信者』 が少なからず存在することが、浅間山の立ち入り禁止区域に侵入する人間が減らない大きな原因ではないかと僕は思う。
仮に浅間山の正式な山頂が前掛山であったならば、わざわざ立ち入り禁止区域に侵入してまで釜山へ登る登山者は半減するに違いない。
前述したとおり 『日本百名山』 自体に罪はない。
しかし行き過ぎた百名山信仰には些か問題があるのではないかと思う。





今現在、浅間山の山頂は前掛山である。もう少し以前は黒斑山だった。それで一体何がいけないというのだろうか?

『百名山完登しましたよ、僕が登った時は浅間は前掛まででしたけどね』

それでいいではないか。前掛けでは価値がないのか?
逆に問おう。法を犯してまで踏んだ頂に、いったい何の意味があるというのだろう?

登山とは、突き詰めていけば自己満足の娯楽である。
景色を楽しむ人も居れば、ピークを踏むことに命を懸けている人もいる。楽しみ方は人それぞれ千差万別だ。
しかし皆が嫌な思いをせずに楽しむためには、一定のルールを守らなければならないのは、他のスポーツや娯楽と何ら変わりはない。
サッカー選手がルールを破って手でボールを運び始めたらそれはもうサッカーではないのと同様に、山だってルールを守れなければそれは登山とは言えないのではないだろうか?

立ち入り禁止の看板を見たとき、溢れ出る好奇心を自ら律することこそが、本来の自己責任ではないだろうか。
今一度自分の中の良心に問いかけてもらいたいものである。


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by misawa_re7 | 2013-11-06 23:56 | 考 察


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