【山行記録】 笠新道を経て 日帰りで行く北アルプス 笠ヶ岳 〔2011.07.06〕
困難と呼ばれるものがあるならば、敢えて挑んでみたいと思うのもまた人の本能である。
それが実現不可能なものではなく、手を伸ばせば届くものならば尚更の事。
今回、僕らは無謀にも工程時間10時間を越える長丁場である笠ヶ岳に挑む事となった。果たしてその結末はいかに?
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2011年7月6日(水) 天候:晴れ
笠新道往復(新穂高~笠新道~杓子平~三叉路~抜戸岩~笠ヶ岳山荘~笠ヶ岳山頂)


・ 高低差、距離、コース概要は上記の通り。
・ 地図上の通し番号は、これからブログに添付する画像の撮影したポイント。




僕が肉体の衰えを明確に感じたのはいつだったろうか?
震災後だろうか?確かに震災を挟んで急激に体力が落ちたのは間違いないが、それ以前から兆しはあった。
そもそも昨年の12月末。それまで毎日のように身体を酷使し、働いているだけで身体を自然と鍛えることができた当時の職を辞した時から、緩やかに肉体の衰えは進行していたのだろう。
筋力は衰え、それに起因して再発する膝痛。そしてめまぐるしく低下した心肺能力からは目を背けたくなる。

それならば日々のトレーニングで身体を鍛えるしかないのだが…
残念ながら僕はトレーニングというものを続けられた試しがない人間である。
筋トレ、ランニング、縄跳び、水泳、etc…そのどれもが1週間と続かなかった。


結果、僕は理解する。
僕という人間は、山登りという言わば自分の好きな領域の中においてのみ、自らをストイックに追い込む事ができる人間なのだと。
つまり、山で使う身体能力を鍛えるのは、山をおいて他にはないのだという事実を。
こうして、2011年7月はトレーニング月間として幕を上げる事となり、その皮切りとして笠ヶ岳が選ばれる事になったのである。




そもそも今年の僕の目標の中に、笠ヶ岳日帰りは最初から含まれていた。
笠ヶ岳日帰り、甲斐駒黒戸尾根日帰り、塩見岳日帰り、仙丈ヶ岳地蔵尾根日帰り。
これらのうち最低でも2つはトライしてみたい、それは僕が今年の夏山に課した命題のうちのひとつである。

しかし体力が充実していた時期ならばともかく、体力が低下し、膝のトラブルも再発した今、笠ヶ岳日帰りなど無謀ではないだろうか?
場合によっては膝痛を致命的なまでに悪化させる可能性も考慮に入れなくてはならない。
今の僕らに果たして行けるのか??
出発前夜、まだ見ぬ10時間越えのトレイルに、僕は珍しく眠れないほどに意気込んでいた。
競走馬で例えるなら完全に入れ込みすぎの状態であった。


それが果たして吉と出たのか凶と出たのか…結果は自ずと数時間後に判明する事となる。



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新穂高ロープウェーの有料駐車場に停車。料金は6時間につき500円だ。(撮影地点1にて撮影)
ここから700mほど下った河原に登山者用の無料駐車場があるらしいのだが、舗装路往復1.4kmは正直キツイ。
12時間以内に下れなければ1500円になるが…まぁそのくらいは仕方ないと諦める事にする。


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ゲート到着。(撮影地点2にて撮影)
ここから始まるのだ、長い長い一日が…


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林道を歩いていると、眼前に笠ヶ岳の雄姿が。(撮影地点3にて撮影)


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美しい…が、果たしてあんなところまで登れるのだろうか??
こうやってみると全く手の届かないところにあるように見えてしまう。
期待と不安が入り混じった、とても複雑な気分で林道を歩く。



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林道を30分ほど歩くと、突然崩落箇所が現れた。(撮影地点4にて撮影)
山側から岩が崩れてきており、林道が完全に封鎖されていた。

『こんな地形あったっけな?』

疑問に思いながら岩を乗り越えた。
何せ一番最近ここを通ったのは15年以上昔、高校山岳部の頃である。道の様子なんていちいち覚えているはずがない。
後で知った事だが、僕らがここを訪れる前日に土砂崩れで崩落したばかりだったようだ。
帰りに通った時には重機が入っており、土砂の片づけが行われていた。現在は普通に穏やかな林道になっている事だろう。



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ゲートから1時間ほどでようやく登山口に到着。(撮影地点5にて撮影)

さぁここから始まるぞ。長い長い笠新道が。
見せてもらおうか、北アルプス3大急登の実力とやらを。


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ブナの原生林が気持ちいい。(撮影地点6にて撮影)
斜面自体は急だが、九十九折になっており足場も非常によく安定している。
一歩一歩のリズムも申し分なく、ものすごく歩きやすい。


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途中、焼岳と乗鞍がどーんと見え始める。(撮影地点7付近にて撮影)


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高度は徐々に上がり、植生が変わる。そしてそれに伴い最高の絶景が!(撮影地点8付近にて撮影)






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あっはっはっはっは。なんじゃこりゃぁwww

槍、穂高が眼前に壁のように立ちはだかる。
素晴らしい絶景だ、こんな景色は笠新道か小池新道、鏡平くらいからしか見えないだろう。
まだ山頂でも何でもないところだというのに、しばらく景色に見入ってしまった。





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こいつはやばいくらい最高だ…


景色も最高だったのだが、実はこの日、僕の体調も未だかつて無いほどに最高だった。
全く疲れない、全然息も上がらない、膝は全く悪化の兆しすら見せない。一体どうしちまったんだろうか?
ペースが速すぎて嫁が着いてこれない程で、まさしく神がかり的なコンディションだった。
当初懸念された、前日の入れ込みすぎの状態は、むしろ今回に限っては極端にプラスに働いたと言っても過言ではない。

こうして笠新道の核心部である杓子平までの登りを、何のトラブルも疲労もなく登りきったのだった。
ただし、あくまでも 『僕だけは』 であるが…








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そして杓子平へ。(撮影地点9にて撮影)

ここは…ヤバイ…。すごすぎる。






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笠ヶ岳も。


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抜戸も、カールも。
何もかもがスケールが全く違う。


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ただただ見惚れるしかない…

ちなみにこの時点で普通の日帰り山のピークくらいの距離と時間を歩いている。
ぶっちゃけここからの展望が素晴らしすぎて、今日はここまででもいいや、という気になってくる。
むしろ、日帰りならば笠を目指さずとも、ここを目的地にしても全然良いくらいである。


というか、実はこの時点で嫁の足がパンパンになっており、休憩のために腰を降ろした瞬間足をつってしまったのだ。
僕とペースが噛み合わなかったのが主な原因だが、塩分摂取不足も要因としてあったと思う。
とりあえずここで大休止をとり、行動食と塩分をしっかり摂取して様子を見る事にした。

展望は十分に満喫できた。ここで無理に山頂を目指すのはあくまでも自己満足。
もし嫁の足の状態が芳しくないようなら、今日はここで撤退する事も覚悟していた。



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しばらく休んでいると、テント泊装備のお兄さんがやってきた。
せっかくの絶景だったので、お互いに写真を撮り合う事に。
山では珍しい、クマ夫婦の2ショットが実現した。


しばらく休憩しているうちに、嫁の足も徐々に回復してきたようだった。
嫁自身の続行との判断により、今回の笠ヶ岳山行は予定通り遂行されることに。
しかし、もし万が一次また足がつるか、もしくはつりそうな予兆を感じたらすぐに下山という条件付きで、続行する事に決めた。



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僕自身もだいぶペースを落とし、嫁に負担の無いテンポで登っていく。(撮影地点10にて撮影)
少しずつではあるが嫁のペースも戻り始め、なんとか笠ヶ岳登頂も視野に入ってきた。


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杓子平から上は雪渓が出始める。(撮影地点11にて撮影)
まさかこの時期にこれほどの雪渓が残っているとは想定外だった。
もちろんアイゼンなど持っているはずも無く、仕方が無いのでステップを切りながら登っていく事に。


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部分的には危険な斜度の雪渓もあるため、斜度が緩い雪面を選んでトラバースしながら夏道を辿る。
軽アイゼンでもあったら楽だったろうなぁと思う。特に下りはキツかった。



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こうして笠~抜戸間の稜線へと出た。(撮影地点12にて撮影)
ここからは奥黒部の山々がよく見える。


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昨年の夏山縦走で登った黒部五郎と、昨年の夏に涙を呑んだ薬師岳とが並び立つ。
因果な巡り合わせだ。


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そして笠ヶ岳へは最後の稜線を残すのみとなった。


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ここまで来ればもはや登ったも同然だ。
あと少し、頑張っていこう。


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稜線自体はアップダウンは緩いので、足の回復に努めながらゆっくり歩く。

しかしここの稜線、とてつもなく気持ちがいい。いつまでも歩いていたくなる、素晴らしい稜線だ。


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抜戸岩。(撮影地点13にて撮影)
ちょうど岩と岩の間から笠ヶ岳のピークがぽっかり覗いている。なかなかのシチュエーション。


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あれほど遠くに見えた笠も、もはや手の届く眼前にまで迫っていた。



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テント場着。(撮影地点14にて撮影)
着いたばかりだというのに後ろの岩にサヨナラの文字がww
待て、まだ登ってすらいないwww

そんなこんなで槍をバックに記念撮影。ここのテント場、最高のシチュエーションだ。
ここでテント泊できたらさぞかし気持ちいいに違いない、ただしテントを担ぎ上げるのは至難だが…



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笠ヶ岳山荘も目と鼻の先だ。
小屋のスタッフさんが雪渓で雪上訓練かな?をしてた。


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さて山荘へ…というところで県警のヘリが襲来ww
どうやら離着陸訓練だった模様。これにより、都合3度ほど足止めを食った。
まぁ万が一遭難した時にはお世話になるかもしれないのだから、それを迷惑に感じるほど身勝手ではない。



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笠ヶ岳山荘着。

スタッフさんが思い思いに好きな事をやってる、自由だなおいww
まぁこの日は平日で、客も僕ら2人と杓子平で一緒だったテント泊のお兄さんだけだったし、そういう暇なときにのんびり山を眺めたり、あるいは近場の山に登ったりできるのが小屋番さんに許された特権なのでこんな時くらい自由もいいと思う。

そういえばこの日の山荘のブログに僕らが紹介されてた。


とりあえず一旦山荘はスルーして、天候が良いうちに山頂へ行く事にする。




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笠ヶ岳山荘から山頂まではあっという間。10分もすれば到着する。(撮影地点15にて撮影)

記念撮影、嫁は槍をバックに。



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僕は当然大好きな鷲羽をバックに。


こうして、当初無謀とも思えた笠ヶ岳日帰り山行だったが、無事山頂を踏む事が出来たのだった。





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山頂からのパノラマ





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槍、穂高の展望





山頂にて最高の展望を満喫した後、笠ヶ岳山荘まで下り、嫁とジュースで乾杯。
無事ここまで来る事ができて、感無量という他無い。
あとは無事下山し、自宅まで戻れば日帰り山行完遂という事になる。

むしろこれからの下りの方が厳しいものになるだろう、気を引き締めていく事にする。



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帰り際に、小屋番さんに教えてもらった水場で水を汲んで帰る。(撮影地点1にて撮影)
さすが雪解け水、凄まじく冷たくて美味い。これは生き返る。


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笠ヶ岳山荘、テント場を後にし、ここからは地獄の下りの始まりである。



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稜線から杓子平までの下りの雪渓はいやらしかった。
最終的にはその大部分を避けて岩の上を歩いて下る事にした。
かなりのタイムロスと体力のロス。これがなければもっと楽だったろう。


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帰る頃には雪渓が解け始め、登山道も沢と化していた。
日中ここを通る時は注意。ある程度濡れるのは覚悟した方がいいだろう。


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そして杓子平から抜戸のカールを見上げながら、笠ヶ岳に最後の別れを告げる。
ここからは本格的にキツイだけの下りの始まりだ。
北アルプス3大急登と呼ばれる傾斜を一気に下るのだから。

最終的に笠新道を下りきる頃には足の裏が激しく痛んでいたものの、これといった大きなトラブルもなく無事下山する事が出来た。



笠ヶ岳日帰り。
最初はあまりに馬鹿げた計画だと思っていたが、実際にやってみると決して無理なものではないということがわかった。
とはいえ、決して楽なものでもなく、通常これだけのルートを日帰りで歩くのはそれなりに覚悟がいると思う。
しかし、ルート自体は決して歩きづらくはないし、むしろテンポ良く登れるので日帰りロングトレイルの入門としては良い山だと感じた。

そして何よりも、笠ヶ岳最高。

これは、山頂を踏んだ時感じた、僕らの率直な感想だった。
この日の天候が良かったということもあるし、もちろん笠ヶ岳という山自体にえもいわれぬ魅力があることは否定しない。
だがしかし、敢えて困難な日帰りという選択肢を選んだ事で、今回僕らの感動は並々ならぬものがあったのは間違いない。
山頂で飲むビールが格別なように、山で食べる食事が美味しいように、苦労した後に得られる対価は当人達にしか真の価値はわからない。

しかしこれだけ良い山を日帰りという形態で性急に駆け抜けるのはあまりに勿体無いというのも事実。
また今度訪れる時は、テント場で、あるいは小屋でのんびりと時間と空間を満喫したいと思っている。
だが、日帰りで頑張って登った時に得られる感動は、1泊で訪れた時のそれとはまた異なるものであるのは間違いないと思う。

何はともあれ本当に楽しい山行だった。
どういった形にせよ、また必ず訪れたい山のうちのひとつである。


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by misawa_re7 | 2011-07-20 22:22 | 山行記録 2011


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