【道 具】 冬期用グローブシステム構築 後編 〔アウター編〕
インナーグローブシステムの完成により、当初より課していた5つの条件のうち4つまでクリアすることが出来た。
残る条件はあと一つ、『-20℃以下の稜線の風にも耐える事が出来る事』
ゴールが見えたかに思えたグローブシステム、しかしまさか落とし穴が待ち受けていようとは…
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冬期用グローブ考察編はこちら。

冬期用グローブシステム構築 前編 インナー編はこちら。




前回のブログで触れたとおり、苦心の末インナーグローブシステムが完成。
それにより、当初より課していた5つの条件のうち、4つの条件をクリアすることができた。
クリアしなければならない条件は残すところ後ひとつ。


-20℃以下の稜線の風にも耐える事が出来る事


この条件をクリアするアウターグローブをインナーシステムに重ねれば僕のグローブシステムは完成する。

この時点で僕の頭の中には、大まかな完成図が描かれていた。
まずインナーシステムに5本指のオーバーグローブを重ねる。
それでも寒さに対応できない場合は、それよりさらに上に3本指のミトンを重ねる。



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これが当初、僕が描き出したグローブシステムの完成図だった。
左の2つは先に紹介したインナーグローブシステム、そして5本指オーバーグローブに、3本指ミトンだ。



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5本指オーバーグローブは

ヘリテイジ ゴアテックス・ウォータープルーフ オーバーグローブ

インナーグローブ同様、ヘリテイジ社のオーバーグローブで、素材はゴアテックス。
ゴアテックスグローブインサートによる完全防水グローブだ。


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インナー部分はポリエステルインナーメッシュ。指先など、部分的にポリエステル生地が使われている。
前回のブログで触れたとおり、インナーメッシュはイスカのレイングローブで痛い目を見ていたため、何度も手を出し入れしたり色々と実験してみたが、イスカのように指の部分のメッシュが引きずり出されるような事がないことを確認してから購入。


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3本指ミトンは同じく

ヘリテイジ ウインドストッパー オーバーミトン 3本指

素材はゴアテックスウインドストッパー。
5本指オーバーグローブとは異なり、シームシーリングを施していないため完全防水ではない。

3本指ミトンは、親指と人差し指が独立しており、軽作業くらいならこなすことができる。
そして何より重要なのはピッケルをしっかり持つことが出来る事、岩などを掴みやすいことが挙げられる。
人差し指が独立していない分、2本指のほうが温かいが、操作性を考慮すると3本指のほうが遥かに使い勝手が良い。




これにより、僕のグローブシステムは完成する…はずだった。
正直なところ理論上、十分いけそうなグローブシステムのはずだった。だがしかし残念ながらこのシステムは不発に終わる。
一見すれば何一つ問題がなさそうに思えるグローブシステム。
皆さんはこの時点でこのシステムに隠された欠陥が一体何だかお気づきだろうか??


一体何が原因だったのか??


僕がこのアウターグローブシステムに持った不満は大きく分けて2つ。
まずひとつは、3本指ミトンの構造に不満を感じたのだ。

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ミトンの表面を見て欲しい。何の加工もなく、ツルツルのナイロン地なのがお分かりいただけるだろうか?
そう、このヘリテイジの3本ミトン


グリップ力が全然ないのだ。


そんなの買う前に気付けよ…という話なのだが、少なくとも店頭に並んでいたミトンは全てこのようにグリップ性のないものばかりだった。
だから僕は基本的にミトンは皆このような構造のものなのだと思い込んでしまったのである。

しばらく後に、別の店でイスカの3本指ミトンを試着した時、そのグリップ性能の違いに愕然としてしまった。
もし最初の店にイスカの3本指ミトンが置いてあったならば、迷うことなくそちらを選んだだろう…。
だが買ってしまってから気付いたところで後の祭りだ。





そしてもう1点…それは僕が年末に行った赤岳での事。

僕は不覚にも5本指のオーバーグローブを凍らせてしまったのだ。

そう、もちろん5本指のオーバーグローブとは、上で紹介した完全防水のオーバーグローブのことだ。
この時の赤岳の外気温は-15℃。
赤岳としては決して低い気温ではない、しかし朝起きてザックからグローブを取り出すと、見事なまでにパリパリに凍っていた。
しかしその時僕はふと疑問を持った。



何故完全防水のグローブが凍るのだ??



そう思うのも無理はない…だがしかし冷静に考えればわかることだった。
僕は 『完全防水』 の意味を履き違えていたのだ。
完全防水とはあくまでも外部からの水の浸入を完全に防ぐことができるという意味である。
いかに外部からの水分を完全に遮断できようとも、身体から発散された微弱な蒸気は少しずつ少しずつ染み込んでいくのだ…

一体何処に???

インナーメッシュにである。

凍ったのはインナーメッシュ、そしてそれは皮肉にもオーバーグローブの中では最も肌に近い部分である。
パリパリに凍ったグローブをはめた瞬間、『これは駄目だ』 とすぐにわかった。
凍ってしまったインナーメッシュを溶かすために、手から熱が一気に奪われていく。
アホな話であるが、オーバーグローブをはめるよりも、外してインナーグローブを露出させているほうが暖かかったのだww
そして僕は察した。このグローブは 『死んだ』 少なくともこの山行中は使い物にはならないだろう…と。


無論、きちんとしたグローブ管理を怠った僕にも責任はある。
夜寝る際に、オーバーグローブをザックの中ではなくシュラフの中にでも入れておけば凍らせずに夜を越すことが出来ただろう。
だがしかし、凍らなかったからといって果たしてインナーメッシュが乾いただろうか??
そもそもインナーメッシュが致命的に乾きづらいのは、イスカのレイングローブで実証済みだ。
たとえ一晩凍らなかったからといって、インナーメッシュが濡れたままだったなら、それはただ問題を翌日に丸投げしただけだ。
何の解決にもなっていない。
これではとても完成されたシステムとは言えない…僕は再び一からアウターシステムを考え直す事にしたのだった。





まず頭を一度整理する。
とりあえずミトンは、よりグリップ性の高いイスカの3本指に買い換えることにする。
メンブレンがゴアテックスからイスカ独自の透湿性素材であるウェザーテックに変わるが、まぁ実用上問題はないだろう。

問題は中間となるオーバーグローブだ。
今回の反省点を生かすならば、最も簡単なのはインナーメッシュを省いたプレーンゴアテックスのオーバーグローブにすれば良い。
少なくとも今回凍ったのはインナーメッシュなのだから、それで凍結の心配は少なくなる。
しかし冷静になって考える。今回失敗したレイヤリングを内側から羅列すると


メリノウール、ゴアテックス、ゴアテックス、ゴアテックス。




ちょっと待て…




3つもゴアテックス要らねぇだろ…ww




僕の考えたレイヤリングは、あまりにも透湿性素材に偏りすぎている。
いや、言い方を変えよう。


保温層が少なすぎるのだ。


最も最下層であるインナーグローブ以外全部ゴアテックスである。
防水、断熱には十分効果があるとはいえ、ゴアテックスのそれ自体には保温力はない。
即ち、僕が失敗したグローブシステムは、一番下に装着しているメリノウールのグローブ1枚分の保温力に依存していた事になる。

なるほど…これでようやく方向性が見えた。僕のグローブシステムに絶対的に足りていなかったのは保温層だったのだ。
ならば答えは出たも同然である。



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これが僕が出した答え。
下からまず、メリノウール+ゴアウインドストッパーのインナーグローブシステム。
次いで極厚ウールグローブで膨大な保温層を確保。そしてそれを3本指ミトンが防水、断熱で外部からの冷気を遮断する。



これが僕のグローブシステムの完成形である。



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完全防水のオーバーグローブの代わりに導入したのは極厚ウールグローブだ。

HELLAS マウンテン

はっきり言ってベラボウに高いが、桁違いに暖かい。
まぁ高いといってもそこらのシステムグローブ買うこと思えば安いもんだ。

ちなみにイスカからこれの半額くらいでシェトランドウールグローブというグローブが出ている。
機能上こちらでも問題ないと思う。むしろ気軽に使い倒せるという意味ではこちらもオススメ。


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あぁ、もう見るからに暖かい…。
この極厚ウールの保温層を追加することによって、僕のグローブシステムの性能は飛躍的に向上した。
-20℃のテント設営において、指先ひとつ痛くならなかったのにはもはや笑うしかなかった。

そしてゴアのオーバーグローブからウールグローブへ移行したことにより向上したのは保温性だけではない。
万が一汗で濡れてしまっても、ウールグローブなら就寝時に装着したまま寝て乾かすことが出来る。
無論オーバーグローブだってはめて寝れば乾くのかもしれないが…
あんなゴツイグローブはめて寝ることは憚られても、ウールグローブならば抵抗なくつけたまま眠れるだろう。


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そしてミトン。

イスカ ウェザーテックオーバーミトン

このグリップの違い…これでは勝負にならないのもわかっていただけるだろうか?
透湿性においてはゴアのほうに軍配が上がるのかもしれないが、実用性では圧倒的にイスカ。


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全部装着してみる。

実は全部装着してみて初めてわかったことがある。
イスカの3本指に限らず、ミトンを使っている人は誰しも感じたことがあるだろうと思うが、基本的にミトンは大きめに作られているため、普通にグローブの上からはめても盛大に空間が開いてしまうのだ。
その空間のせいで、作業をする時ミトンがずれて動いてしまい、非常に操作性が悪いと感じたことはないだろうか??

だが中間に極厚ウールをかませることによってミトンの空間が埋まり、厚みが増えたのにも関わらず、むしろ操作性が向上するのだ!

ピッケルやストックの操作はもちろんのこと、岩を掴んだりするのにも支障がない。
そして驚くなかれ、この状態で一眼レフで普通に撮影をすることが出来る。カメラの設定も弄れる。
何とも皮肉な話だが、厚みが増えれば増えるほど操作性は悪くなると思っていたのに、こんな例外が存在するとは…
嬉しい誤算とはまさにこの事だろう。


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ちなみにイスカのミトン、ゴムループがついており、これがリーシュ代わりになる。
装着する時にループに腕を通しておけば、グローブを外しても吹き飛ばされることがないのだ。


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どうしても細かい作業が必要になったときは、このように外し腕にぶら下げておく。
その際、口を絞っておくと中に雪が入り込んでしまうこともない。

ちなみにこの時ウールグローブはミトンの中だ。
外し方には少々コツがいるが、上手く引き抜けば3本ミトンに綺麗にウールグローブの指が収まった状態で引き抜くことが可能。
そのまま再びスムーズに指を入れることも出来る。
慣れてしまえばわざわざ一度ウールグローブを取り出してまた装着しなおす…などという面倒なことはしなくても済む。



さてそんなわけで…


先日の大寒波の赤岳の稜線での停滞実験である。


気象条件は風吹き荒ぶ-23℃の稜線、日射無し。
15分程度の停滞実験をしたが、全くといっていいほど問題なし。
カメラのバッテリーが切れていたので、右手のアウターグローブを外し、インナーグローブのみでの作業を3分ほど敢行した。
さすがに一気に体温を持っていかれ、多少指先が痛くなったが素手よりは遥かにマシ。
作業完了後ミトンの中に指を戻すと、極厚ウールが蓄熱していてくれたおかげか、すぐに指先の痛みが引く。


結論!このグローブシステム…



ほぼ死角なし!!



というか現状、欠点という欠点が見当たらない。
2泊や3泊程度ならば何のトラブルも起きそうにない、全く破綻する気配が見えない安定したシステムだ。
これも全てウールグローブの信頼性の成せる業だろう。やはり昔から愛用され続けてきたのにはそれなりの理由があるのだ。


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だが!それでも念には念を入れる。
雪山に入る際は、それとは別に同等の性能を有する予備をもう1セット必ず持ち歩くようにしている。


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このようにコンパクトに折りたたみ、防水性のあるミトンで覆い被せた上でジップロックに入れれば完璧。
完全に無傷、濡れのない状態でいつ何時出番が来ても問題ないように確実に保護しておく。
グローブはいつ 『死ぬ』 かわからない。
これはいわば最後の最後の切り札。これを開封する時は即下山を意味する。
雪山で命を守るのは極々当たり前の事だが、それよりもいとも簡単にあっさり逝ってしまう末端を守るのも非常に重要だと思う。


これにて、予備も含めた僕のグローブシステムは完成である。
実に長々と、3部にも渡って書き連ねた長いブログになってしまったが、おそらくこれ以上このシステムに手を加える事はないだろう。
システム構築するにあたり、色々な方に助言を請うた。
ブログで知り合った友達、山で出合った見ず知らずの方、いつもお世話になっている登山道具屋のおばちゃん。

皆、口を揃えて言う。皆が皆、同じ事を言う。


そして今回、僕も敢えて同じ事を言わせていただこう。





雪山行くならウールにしとけ。



↓ ウール最高です。これ読んでウール買いたくなったらポチっとww(-´▽`-)

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by misawa_re7 | 2011-01-21 02:47 | 道 具


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