【道 具】 ダウンシュラフ選びの顛末 モンベル イスカ ナンガ
昨日のブログで僕の買ったシュラフ、ナンガナノバック300SPDXの紹介をした。
しかしこれを選ぶにあたり、数々の試行錯誤と葛藤があったことは言うまでもない。
今回は僕がこのシュラフを決めるに至った経緯と、その顛末をブログにまとめてみた。
シュラフ購入を悩んでいる人に、少しでも参考になれば幸いである。
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今回シュラフを選ぶにあたり、夏~秋に使うことの出来る3シーズンシュラフが欲しかった。
その条件に該当するシュラフのダウン量は、およそ300g前後。
一般的にはダウン量300gというカテゴリーのシュラフは、どちらかというと夏寄りの3シーズンで、冬期の使用には適さない。
冬期の使用を考えると、400g~500gのダウン量のシュラフを選択するのが妥当と言われていた。
しかし、僕は基本的に超が付くほど暑がりである。なので一般よりも少な目の300gのカテゴリーでも、インナーダウンやアウターシュラフと重ねることで、あわよくば厳冬期を除く4シーズンで使えるかもしれないという希望も込めて、このカテゴリーのシュラフにスポットを当てた。

まずは3社の比較をするため、300g前後のダウン量のシュラフを並べてみた。



【モンベル】 U.L.スーパー スパイラルダウンハガー#3

【素材】 中綿:800フィルパワー・EXグースダウン (ダウン90% フェザー10%)
     撥水加工:ポルカテックス®
     生地:バリスティック®エアライト
【羽毛量】 記載なし
【総重量】 620g(本体重量:600g)
【収納サイズ】 φ14×28cm (3.4L)
【快適睡眠温度域】 0℃
【使用可能限界温度】 -10℃
【価格】 定価25,500円



【イスカ】 イスカ エア 280X

【素材】 中綿:800フィルパワー・ホワイトグースダウン (ダウン90% フェザー10%)
     生地:表/コーデュラナイロン100%・裏/ナイロン100%
【羽毛量】 280g
【総重量】 550g
【収納サイズ】 φ14×27cm
【参考使用温度】 2℃
【価格】 定価 25,750円



【ナンガ】 ナノバック300DX

【素材】 中綿:760フィルパワー・マシンピックホワイトダックダウン (ダウン90% フェザー10%)
撥水加工:NANO-tex撥水加工
     生地:30dnナイロン
【羽毛量】 300g
【総重量】 620g
【収納サイズ】 φ15×21cm
【快適使用温度】 -2℃
【使用可能限界温度】 -8℃
【価格】 定価 23,730円



見づらくて申し訳ないが、この3商品がこのカテゴリーに該当する。
モンベルは羽毛量の記載がないのだが、総重量から見るに、おそらくこの#3が300gクラスに該当するだろうと推測した。
各社多種多様であり、それぞれに特徴がある。とりあえずひとつひとつの項目ごとに比較してみることにした。




【素材】

まずはダウンシュラフで最も重要な要素であるダウンに関して比較してみた。
モンベル、イスカが800フィルパワーのグースダウンなのに対し、ナンガは760フィルパワーのダックダウンである。
グースダウンはがちょうの胸から採取された綿毛を、ダックダウンはアヒルや鴨から取れたものを言う。一般的にはグースダウンのほうがハンドピックで採取するため手間もコストもかかるが、保温性は高い。

配合率は、各社ともダウンが90%、フェザーが10%である。
ダウンは保温性、フェザーはロフトを稼ぐために配合される。ダウンが多いほど保温性は高い。

単純に比較するとナンガのナノバックDXが760フィルパワーで他の2社からは一歩後退しているが、イスカのエア280は文字通りダウン280gと他の2社よりも20g少ないので、単純計算で差し引いて、フィルパワーが低いナノバックと同程度の保温力を有すると推測する。
モンベルの#3は、ナノバックと同一重量であることから、およそダウン量も同じと推測されるので、数字の上では800フィルパワーのダウンを、およそ300g詰めてあるモンベルの#3が保温力が最も高そうだ。
しかし、素材の問題、ダウンの品質などにも左右されるので、必ずしも断定は出来ないが。


表生地はモンベルのバリスティックエアライトが12デニールと圧倒的に薄い。
イスカとナンガは30デニールでほぼ同等だが、イスカは引き裂き耐性や耐摩耗性の高いコーデュラナイロンを使用している。
撥水加工においては、モンベルのポルカテックス加工は世界最高レベルの撥水性を謳っている。
対して、ナンガはNANOtex加工を施しており、これは従来の表面加工とは異なり、素材の繊維そのものに結合させることによって高い耐久性を持たせた加工方法だ。これにより通気性や耐久性を損ねることなく、高い撥水性を保持しているようだ。


総合的に見るとモンベルが優れているように思うが、12デニールという薄い素材に僕は少々不安を覚えた。
薄いということは軽量で嵩張らないが、しかし耐久性は厚い生地には劣るだろう。長く使うものだけに、一定の耐久性は保持していてほしい。
イスカは耐久性は問題ないと思うが、撥水加工に関しては何の記述もないところを見ると、あまり撥水性は期待できないのかもしれない。
ダウンの性質上、濡れは厳禁である。使用に際しては気をつけてはいるし、そのためにシュラフカバーというアイテムも存在するのだが、それでもやはり本体側にも一定の撥水加工は必要と思う。
そう考えるとナンガのNANOtexが撥水性と耐久性のバランスが良いと思う。

しかしモンベルの表面素材はスパイラルストレッチという伸縮加工が施されている点も考慮しなければならない。
シュラフが窮屈に感じる人にとっては立派なアドバンテージである。
僕はあまりシュラフを窮屈に感じたことがない(そもそもシュラフは窮屈であるものと思っている)ので、あまりメリットは感じないのだが…。




【重量・収納サイズ】

イスカはダウン280gなので550gと最軽量。次いで同重量で2社が続く。
モンベルのダウン量が確定しないので単純に比較は出来ないが、仮に20gダウンを増やしても570gのイスカが最も軽量か?


収納サイズは、モンベル φ14×28cm  イスカ φ14×27cm ナンガ φ15×21cm
体積に換算すると、モンベル 4300c㎥ イスカ 4150c㎥ ナンガ 3700c㎥
ナンガが最もコンパクトである。イスカは280gの割りに少々大きめのような気がするが…
モンベルは軽量で薄い表面生地を使っている割には収納サイズは意外とデカイ。

これらはシュラフの構造による差に起因していると思われる。
ナンガナノバック300はシングルキルト構造なのに対し、モンベル#3はボックスキルト。イスカエア280はボックスキルトとシングルキルトを併用した特殊な構造になっている。
昨日のブログでも少々触れたがシングルキルト構造は、軽量性、携帯性に富み、ボックスキルトは保温性に優れる。
その違いが収納サイズとして、このような形で現れていると思われる。

よって、収納サイズ的にはナノバック圧勝ではあるが、構造が違うので必ずしも秀でているとは断言できない。




【快適使用温度】

快適使用温度という記述に関しては、モンベルとナンガは快適と使用可能限界という2つ共通のワードを用いた同じような表記になっている。


モンベル #3 【快適睡眠温度域】 0℃ 【使用可能限界温度】 -10℃
ナンガ ナノバック300DX 【快適使用温度】 -2℃ 【使用可能限界温度】 -8℃


数値もだいたい同じくらいで、おおよそ同等の性能を有している事がわかる。
しかしイスカだけ少々表記が異なる。例えばイスカエア280の場合

参考使用温度2℃と書いてあるその上に、さらに最低使用温度2℃とも表記されている。

何のことやらさっぱりわからない。
参考使用温度とやらを、モンベルやナンガのいう快適使用温度とするならば、納得のいく数値だ。
しかし最低使用温度と言われれば、2℃までの温度域までしか対応できないととるしかない。

これはあくまでも僕の推測だが、この表記はクレーマー対策なのではないかと思う。
寒すぎて寝られなかったと文句を言ってくる輩がおそらく多かったのではないか?
メーカーが提示しているとはいえ、しょせんこんなものはあくまでも目安の数字に過ぎず、人が変われば体感温度も変わるのだから絶対的な指標になどなりえない事くらいわかるはずである。
それを食って掛かるなど愚の骨頂だし、自分の物を見る目がなかったことを露呈しているに過ぎないではないか。
とまぁそういうわけで、数字としてないものは仕方ないのだが、ダウン量と他の2社のスペックと比較し推測すると。


イスカエア280 【快適使用温度】 2℃ 【使用可能限界温度】 -7℃


こんなところだろうか??
この数字もあくまでも僕が独断と偏見で出した数字である。あまりあてにしないでいただきたい。

こうやってみると、数字を比較する限りではどれも似たり寄ったりである。
結局選ぶために検証してみた結果が、更に自分を迷わせる結論に達してしまったのである。






この時点で性能に大差はないものの、各製品ごと特徴があり、欠点と利点を内包していることはよくわかった。
ここで、僕はその欠点と利点を自分のはかりにかけ、自分のオンリーワンを導き出すことにした。


まずモンベルの最大の売りであるスパイラルストレッチシステム。
これは僕には不要だ。むしろその薄さが不安ですらある以上、僕にはモンベルを選ぶ選択肢はない。
現物も見て決めた結論なのでこれは揺らぐまい。生地を薄くして耐久性を落としてまで、僕には伸縮性を選ぶ理由はなかった。


イスカは表生地に撥水性を持たせていない点が引っかかった。
冬期や梅雨の時期、降雨時に起こりうる結露に対してあまりに無防備すぎるではないか。
一日ならば我慢すればすむが、連泊では致命的である。
シュラフカバーを併用すれば問題ないが、シュラフカバーを追加で買わなければ他の2つと同等に使えないと言うのであれば話は別である。
他ならばシュラフのみで済む出費が、シュラフ+カバー代に化けてしまっては金額的に一発アウトである。


しかし最後に残ったナンガ300DXも不安な点があった。保温性である。
ナンガのダウンの品質を疑っているわけではない、あくまでも数字と構造の問題だけだ。
760フィルパワーのダウンである点、シングルキルトである点が、他の2つよりも弱いポイントだった。
厳冬期以外、あわよくば厳冬期でも森林限界以下までならば…ともくろむ僕にとっては、少しでも保温性が確保できるにこしたことはなかった。
しかしこれより上のシュラフとなると、嵩張るようになるし、何より暑すぎて逆に夏、秋の使用に支障をきたしそうである。


迷いに迷った結果、ナノバック300DXの860フィルパワー版であるナノバック300SPDXに白羽の矢が立ったのである。

しかしこいつにも欠点がないわけではなかった…

値段がべらぼう高いのである(;´Д`)

何せもうワンランク上であるナノバック410DXよりも高いという破天荒ぶりである。
しかしダウン量400gと同等の保温性を誇りつつも、収納サイズは300gクラスという夢のようなシュラフである。
迷った…悩みに悩んだ。何せ夫婦で登山やってる関係上、装備は常に二人分、倍のお金がかかるのだ。
しかも嫁のシュラフは僕のシュラフよりワンランク上を買わなければ寒さに耐えられないだろう。
となると410もSPDXを買わねばならない。


しかし最終的にはナンガの『永久保証』に惹かれてしまった。

と、いってもその保証内容にではない。一度売った商品の面倒を生涯見ようというその心意気にである。
自社製品への絶対的な自信、信頼。そして自分が作り出した我が子とも言うべき商品に対する愛情である。
ならば僕も生涯使い続けようという覚悟で、今回のシュラフの購入へ踏み切ったのである。
何も難しいことはない、至極単純な話ではあるが僕はこのナンガというブランドを好きになってしまったのだ。結局はそれだけのことである。


非常に高い買い物になってしまったが、僕は一切後悔はしていない。(というかまだ2回しか使ってないがw)
道具の中にはその性質上使い捨てのような扱いを受けるものもある。
しかし愛着を持って一生涯使い続けることの出来る道具も数多くあるのだ。
どこまで使い続けられるか、先のことはわからないが、せっかく僕の元に来てくれたのだ。大切に使っていきたいと思う。


これが今回シュラフを選びの顛末である。


せっかく2度も山行で使ってきたので、近いうちにインプレッションをブログで書こうと思っている。
駄文ではあるが、少しでも多くの人の参考になればと思う(*´∀`*)


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by misawa_re7 | 2010-03-31 00:00 | 道 具 | Comments(4)
Commented by ゆう at 2010-10-31 23:16 x
はじめまして。
初めてのシュラフ選びでいろいろ検索してた所 こちらに辿り着きました。
600g位で そこそこ暖かいのを探してまして
ナノバック300SPDXがちょうどいいかなぁと思っている次第です。
ちなみに 奥様と同じく寒がりの女性です。^^

使うのは 春先低山から 夏山2500m位 11月頃の低山までです。
寒くはないでしょうか?
プラス ウオームアップシーツは使ってもいいかなと思っています。
ご回答いただけたら幸いです。
よろしくお願いします。
Commented by misawa_re7 at 2010-11-01 23:22
>ゆうさん

初めまして!(*´∀`*)

春先、及び11月頃の低山ということは、まぁおおよそ外気温は0℃前後、下がっても-5℃程度と仮定します。
体感温度は人それぞれ違うので、間違いなくいけるとは断定できないのですが、問題は無いとは思いますよ。
ただし、構造上、300SPDXはジッパーからの冷気の流入を防ぐドラフトチューブや、肩口からの冷気の流入を防ぐショルダーウォーマーがありません。
故に、人によっては全体的には暖かくても、部分的に寒い…という現象は発生する可能性はあります。
保温性の高いズボンを履くなり、暖かい靴下を履くなり、特に下半身のクロージングに気を使えば十分快適に眠れると思いますが、まぁ300SPDXを買ってみて、実際に使ってみて衣類で調整、万が一どうしても寒ければシュラフカバーを追加…という流れが一番間違いないのではないでしょうか??

あ、ちなみに多分夏山2500mにこのクラスのダウンシュラフはオーバースペックだと思いますw
寒がりのうちの嫁ですら、ペラペラの化繊シュラフにシルクシーツで問題なく寝ているので、夏山はまた別のものとして考えたほうが良いかもしれませんね。
Commented by misawa_re7 at 2010-11-01 23:32
あ、前提条件ですが、マットだけは相応に保温力のあるものを使用してくださいね。
リッジレストとかでもいいんで、例えば銀マット一枚じゃ寒くて眠れないと思いますのでww
Commented by ゆう at 2010-11-01 23:59 x
早々に 親切丁寧なご回答ありがとうございました。
衣類などの調節 とても参考になりました。

意外にも夏山2500にはオーバースペックなんですねw
なかなか ひとつのシュラフで通すというのは難しいのですね。
最初はその上の410も考えていましたが 300で十分だと確信しました。

マットはプロライトのSサイズを購入したので大丈夫だと思います。
早速購入に踏み切ります^^
ほんとにありがとうございました♪
またちょくちょく覗かせて頂きます☆


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